人事ノウハウ

【連載企画】人的資本経営トップ対談 #10 「AI×人的資本」人事はどう進化する?

2025/10/14

【連載企画】人的資本経営トップ対談10「AI×人的資本」人事はどう進化する? 対談:メルカリCHRO 宮川愛氏 × 法政大学教授 田中研之輔氏

メルカリCHRO 宮川愛氏 × 法政大学教授 田中研之輔氏

今、「人的資本経営」が急速な広がりを見せています。本連載では、その最前線を走るトップリーダーに光を当て、実装のリアルに迫ります。
第10回のゲストは、株式会社メルカリ執行役員CHROの宮川 愛氏。近年、メルカリは「AI-Native Company」への大転換を方針として掲げました。AI Task Forceによる全社業務の再設計、評価における主観×客観のすり合わせ、エンゲージメントの再設計、そしてAI時代だからこそ求められる人の役割まで……。AI全盛時代、人事はどのように進化すべきなのか。法政大学・田中研之輔教授とともに紐解きます。

「AI-Native Company」への大転換

田中氏:最も伺いたい論点は「AI」です。今や大学でも学生が生成AIを当たり前に使っています。そんな激変期ともいえる企業の現場で、メルカリではどんな戦略を描いていますか。

宮川氏:私たちは会社戦略の主眼に「AI-Native Company」への変革を掲げました。まず専任のAI Task Forceを立ち上げ、各部から人員を招集。社内の業務フローの徹底的な見直しに取り掛かっています。外部のツール活用にとどまらず、社内のプラットフォームやイントラも含めて土台から変える。多少事業のスローダウンがあっても、ここはやり切ると決めました。

田中氏:部署も起こして、本気度が伝わりますね。

宮川氏:はい。異動メンバーは、あえて同じ部署で長く活躍してきた優秀層を中心に選びました。AI時代は一つの職種に閉じない「視点の多さ」が要になります。現場をよく知る人が業務をゼロから洗い直すのが一番早い。今は仕込みの段階ですが、社内の空気は一変しました。当初はネガティブな声もありましたが、Slackではツール共有や実験知が日々流れ、今はワクワク感が勝っています。

AI全盛時代、人にしかできないことは?

田中氏:AIで業務は高速化されます。では、人にしかできない価値は何でしょうか。仕事観の転換点はどこにありますか。

宮川氏:メルカリでは「AI-Native人財」という定義を置きました。AIと協働し、新しい価値を生み出す人。私たちはその核に「越境」という考えを入れています。AI時代においては職種の枠はどんどん溶けていく。できる人が、必要なスキルを携えて領域をまたいで染み出していく世界です。リーダーシップ要件も更新が必要で、戦略構想力(ビジョンを描く力)と変革推進力(やり切る力)の間に「対話(Dialogue)」を置く。トップダウンだけでなく、問いを立て、ボトムアップの知を引き出す力が要となります。AIと人との対話、人と人との対話。その両方を設計できるリーダーが、AI時代の価値創造を牽引すると考えています。

田中氏:AIがタスクを肩代わりすれば、対話の時間を意図的に確保できますね。生産性を落とさず、じっくり練り上げる時間を増やせる。

宮川氏:実際、人事チームでオフサイトミーティングをやってみて感じました。業務がAIで本当に効率化すれば、私たちはオフサイトばかりやっているかもしれない、と。中長期や戦略の対話にもっと時間を使える。私自身、社外向けのプレゼンでは、アウトラインを渡して生成AIにスライドを作ってもらい、翌朝には骨子が上がっていたという体験もありました。したがって、人の仕事はますます考えることに寄っていくはずです。

→ぜひこちらから、対談の全編をご覧ください。

宮川愛氏 プロフィール

株式会社メルカリ執行役員CHRO

  • 2003年よりデル株式会社にて国内およびアジア太平洋地域の人事に従事。
  • 2014年シスコシステムズ合同会社入社後、2016年8月より同社執行役員人事本部長に就任。
  • 同社のカルチャー変革、エンゲージメントやリーダーシップ施策を牽引。
  • 2018年、2021年及び2023年に「働きがいのある会社ランキング」大規模部門1位獲得。
  • 社内のみならず、「日本の働くを変える」を自身のパーパスとし講演やセミナーに多数登壇。
  • 2024年6月より現職。

田中研之輔氏 プロフィール

博士号 専門:キャリア開発 組織アナリスト
株式会社 キャリアナレッジ 代表取締役社長
一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
法政大学キャリアデザイン学部 教授
UC.Berkeley 元客員研究員/Melbourne University 元客員研究員
日本学術振興会 元特別研究員(PD:一橋大学/SPD:東京大学)
著書38冊・社外顧問 36社歴任

<著作リスト・一部>

『プロティアンシフト』(2023.5)
『社員がやる気をなくす瞬間』(2022.12)
『人的資本の活かしかた』(2022.8)
『キャリアワークアウト』(2022.7)
『今すぐ転職を考えてない人のためのキャリア戦略』(2022.4)
『新しいキャリアの見つけ方』(2022.1)
『プロティアン教育ー三田国際学園のキャリアエスノグラフィ』(2021.11)
『ビジトレー今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』(2020.6)
『プロティアンー70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』(2019.8)
『教授だから知っている大学入試のトリセツ』(2019.3)
『辞める研修 辞めない研修ー新人育成の組織エスノグラフィー』(2019.3)
『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(2018.7)
『ルポ 不法移民ーアメリカ国境を越えた男たち』(2017.7)
『実践するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『進化するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『キャリア・スタディーズ -これからの働き方と生き方の教科書』(2024.9)
『これからのキャリア開拓』(2025.6)
『グロースマネジャー』(2025.6)

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※本内容は、2025年6月時点の取材にもとづき掲載しています。

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