<派遣の抵触日が設けられている理由>
- 派遣が恒常的な労働力の代替とならないようにするため
- 企業側に直接雇用への切り替えを促すため
2025/01/30

「派遣社員の抵触日について詳しく知らない」「抵触日を迎える場合、どのような手続きが必要になる?」といった疑問をお持ちの企業の担当者様も多いかもしれません。派遣社員の受け入れを検討するにあたっては、労働者派遣法で定められた「抵触日」のルールと正しい手続きについて理解しておく必要があります。
このページでは、派遣の抵触日が設けられている理由と、事業所単位・個人単位のルールや企業が必要な手続きについて、詳しく解説します。
目次
抵触日とは、派遣可能期間の満了日の翌日に設定される派遣が禁止されている日を指します。抵触日には「事業者単位」と「個人単位」の2種類が存在します。
では、なぜ派遣の抵触日が設けられているのでしょうか。主な目的には、下記が挙げられます。
<派遣の抵触日が設けられている理由>
派遣労働は、臨時的・一時的な労働力として活用されることが前提です。抵触日を設けることで、企業側が派遣社員を正社員の代替として恒常的に利用することを防ぎます。
労働者派遣法の改正は、不安定な雇用状態を是正することを目的としており、企業にとっても重要なコンプライアンス要件となっています。優秀な派遣社員を直接雇用に切り替えることで、すでに働いた実績のある人材をより長期間、安定して雇用するメリットがあります。
<派遣の抵触日の種類>
派遣の抵触日には、「事業所単位」と「個人単位」の2種類があります。どちらも原則として、同じ事業所や組織単位で3年間、派遣社員を受け入れることができる期間制限のルールに基づいています。それぞれの違いについて見ていきましょう。
同一の派遣先の事業所に対し、派遣できる期間は、原則、3年が限度となり、派遣先が3年を超えて受け入れようとする場合は、派遣先の過半数労働組合等からの意見聴取する必要があります。1回の意見聴取で延長できる期間は3年までです。
事業所内に複数の部署があり、派遣社員が複数名在籍する場合は部署に関わらず、最初に派遣社員を受け入れた日が、事業所単位での派遣受け入れの開始日で、3年経過時点で派遣可能期間が満了します。
派遣社員を複数部署で複数名受け入れている企業では、最初に受け入れた派遣社員の派遣可能期間によって事業所全体の抵触日が設定されるため、派遣社員の派遣期間とは別に管理が必要です。
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、3年が限度となります。事業所単位とは異なり、個人単位の期間制限は延長できません。
例えば、「◯◯営業部」で3年働いた派遣社員は、同じ営業部ではそれ以上働くことができません。
抵触日の通知とは、「派遣先事業所単位」の期間制限抵触日がいつであるのかを、派遣元に示すための書類です。派遣契約締結(契約開始/契約更新時)の都度、派遣先から派遣元に対して、抵触日の通知を行う必要があります。また、派遣元はこの事業所抵触日の通知を受領していない場合、派遣契約を締結することができません。
抵触日の通知について詳しくは以下のページで解説しています。
派遣契約における抵触日の通知と待遇に関する情報の提供について詳しくはこちら
派遣先企業様に作成いただく各通知書面のひな形および記入見本を用意しました。ダウンロードしてご活用ください。
事業所単位の抵触日は派遣契約締結の際に派遣先から派遣元に通知しますが、個人単位の抵触日は派遣元から派遣先に通知する機会がありません。
仮に、派遣先が個人単位3年を超えて同一人物を受け入れた場合、派遣先にはみなし雇用制度が適用されてしまいます。
そのため、必要に応じて派遣元に個人単位の抵触日について確認することや、派遣先にて受入れ期間の管理をすることをおすすめします。
派遣可能期間を延長するには、法律に則った手続きを行う必要があります。派遣の延長手続きの流れは、下記のとおりです。
■一般的な派遣期間の延長手続きの流れ
派遣社員の受け入れが、3年の期間制限に近づいているかを事業所単位で確認します。
事業所に労働組合がある場合はその組合、ない場合は従業員の過半数を代表する者を選出します。
抵触日(3年満了日)の1カ月前までに、派遣社員の受け入れ延長について過半数労働組合または代表者から意見を聴取します。
意見聴取の内容や結果を記録し、事業所内の従業員に周知します。掲示板への掲示や電子ファイルでの共有などが一般的です。
延長が決定した場合は、派遣元へ新たな受け入れ期間や抵触日を通知します。なお、実務上は、正式な延長手続きに入る前に、派遣元に意向を共有しておくことが一般的です。
意見聴取の記録は、抵触日から3年間保管する義務があります。
<派遣の抵触日に関するよくある質問>
Q.期間制限のクーリング期間とはどのようなものですか?
Q.社内管理の都合で抵触日を一本化したいのですが、調整のために今から受け入れ期間を変更することは可能でしょうか。
Q.「事業所単位」と「個人単位」の2種類ということでしたが、「組織単位」の抵触日という第3の抵触日もあるのでしょうか。
Q.有期雇用と無期雇用が混在する職場の場合は何か特別な手続きはあるのでしょうか
Q.派遣社員を受け入れている新宿支店と三鷹支店を統合して西東京支店とする場合、受け入れ期間制限はどのように設定されるのでしょうか。
事業所単位と個人単位の期間制限ともに、期間制限の通算期間がリセットされる空白期間(いわゆる「クーリング期間」)が定められています。いわゆる「クーリング期間」は、「3カ月超」(3カ月と1日以上)です。
なお、期間制限を逃れるために、意図的にクーリング期間を設定する事は、派遣労働者のキャリアアップの観点や、派遣法の趣旨に反するものとされています。
事業所単位の抵触日の設定は、初回3年と定められているため、派遣先が任意の期間を設定することはできません。派遣先の独自ルールとして派遣受け入れ期間を短く定めて運用することは差し支えありませんが、派遣元に通知する抵触日は派遣法で定められた3年でなければなりません。
さらに詳しくは下記ページで解説しています。事業所単位の期間制限のそろえかたについて詳しくはこちら
抵触日は、「事業所単位」と「個人単位」の2種類のみです。「組織単位」の抵触日とは「個人単位」の抵触日の別の呼び名です。「個人単位」の抵触日の正式な表記はとても長いため、「個人単位」、「組織単位」の2種類の“あだ名”が付けられています。
さらに詳しくは下記ページで解説しています。個人単位と組織単位の期間制限?について詳しくはこちら
有期雇用と無期雇用が一つの派遣先の職場に混在していても特別な手続きは何もありません。無期雇用派遣社員は個人単位の抵触日だけではなく、事業所単位の抵触日も適用されないので、無期雇用派遣社員の受け入れに関して事業所の受け入れ期間延長の手続きを行う必要はありません。
ただし、有期雇用派遣社員も同時に受け入れているのであれば、事業所単位の抵触日を延長する必要があります。延長手続きが行われない場合、有期雇用派遣社員の受け入れを停止しなければなりませんが、無期雇用派遣社員はそのまま継続することが可能です。
さらに詳しくは下記ページで解説しています。有期雇用と無期雇用が混在する職場の抵触日について詳しくはこちら
事業所単位の抵触日は、西東京支店として新たな期間制限を設定せずにこれまでの抵触日を引き継ぐことになります。
新宿支店と三鷹支店で抵触日が異なる場合、期間の到来が早い抵触日を引き継ぎます。
例えば、新宿支店の抵触日が2025年10月1日、三鷹支店の抵触日が2026年1月1日とすると、早く到来する新宿支店の抵触日を西東京支店の抵触日とします。
さらに詳しくは下記ページで解説しています。派遣先組織再編の場合の抵触日再設定ついて詳しくはこちら
派遣社員を受け入れる企業は、抵触日のルールを正しく理解し、3年を過ぎても継続を希望する場合、法律に則った延長手続きを踏むことが大切です。これは、法律違反のリスクを回避するだけでなく、派遣社員との信頼関係を築き、より良い関係を構築することにもつながります。
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IT法務、エンターテインメント法務、フランチャイズに特化した企業法務専門の法律事務所にて勤務した後、東京都内3拠点の法律事務所(新宿東口法律事務所、立川法律事務所、八王子法律事務所)を構える東京弁護士法人を設立。東京弁護士法人は弱点のない総合型法律事務所を目指し、各弁護士が個人向け業務・法人向け業務、民事事件・刑事事件問わず横断的に案件を扱いながら総合力を高めつつ、弁護士によって異なる得意分野を持つことで専門性もあわせ持つ法律事務所となっている。
東京都内3拠点(新宿東口法律事務所、立川法律事務所、八王子法律事務所)を構える東京弁護士法人にて、法人向け業務・個人向け業務を幅広く取り扱っている。法人向け業務では、顧問先企業の労務問題対応を担当することが多く、残業代請求対応や不当解雇問題、問題社員対応など多岐にわたる。学生時代に長く野球に携わってきた経験から、その持ち前の体力を武器に、決して諦めず、お客様に誠心誠意真正面から向き合う姿勢を持ち続けることをモットーとしている。


