特定技能「航空」とは?航空分野で外国人材を受け入れる方法と注意点
2026/05/29

特定技能「航空」分野は、すでに運用が開始されている外国人材の雇用が可能な在留資格です。
特定技能は、既存の制度である技能実習制度や、今後開始が予定されている育成就労制度に比べて、即戦力となる外国人材の雇用が可能な制度です。従事できる業務の範囲も広いことや、長期間の雇用が見込めるなど、ほかの制度にはない特徴があります。
本記事では、特定技能の航空分野の詳細をわかりやすく紹介します。航空業界の現状や、外国人材を雇用する方法や注意点も紹介するので、同分野で外国人材の雇用を考えている企業の方はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
特定技能「航空」とは?航空業界の現状
在留資格「特定技能」は、2019年4月から開始された外国人材を受け入れるための制度です。2026年1月の閣議決定により、「リネンサプライ」「物流倉庫」「資源循環」の3つが追加され、特定技能の対象分野は19分野となりました。これらの分野のうち、一部は関係省令等の準備が整い次第、受け入れが可能となります。
特定技能「航空」は、制度が開始された2019年度4月から外国人材の受け入れが行われている分野のひとつです。
航空分野で外国人材の雇用が求められる背景には、航空業界の人手不足があります。特に近年は、訪日外国人旅行者の増加により航空旅客数は大きく伸びています。たとえば、2022年から2024年にかけて、日本の航空旅客数は約1.5倍に増加しました。
一方、就業者数の増加は約1.2倍にとどまっており、需要の伸びに対して人材確保が追いついていない状況です。航空分野の有効求人倍率は約4倍前後と高水準にあり、人材不足が慢性的に続いています。
政府は人手不足対策として、業務の先進技術の導入をはじめとする生産性向上のための取り組みを行っているほか、国内人材の確保に向けて賃金改善や労働環境の整備、女性や高齢者の就業促進などに取り組んでいます。
政府の推計によると、航空業界には2028年度に約5万1,500人の就業者が必要との見込みです。しかし、整備士の高齢化による大量退職の懸念もあります。
人材不足の解消には限界があり、人手不足対策を講じても約4,900人の人手不足が生じると見込まれています。
航空輸送は日本の経済活動や観光を支える重要なインフラです。安全で安定した運航を維持するには、外国人材の受け入れが必要とされており、特定技能での受け入れが行われています。
出典:国土交通省「航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
そもそも「特定技能」とは?
「特定技能」とは、日本の深刻な人手不足に対応するために創設された在留資格であり、一定の専門性や技能を有する外国人材を即戦力として受け入れることを目的とした制度です。
人手不足が慢性化している業界にとっては、重要な人材確保の手段のひとつといえるでしょう。
「特定技能」について、以下で詳しく解説します。
特定技能の概要
日本で外国人が就労するには、就労が可能な在留資格を取得する必要があります。在留資格は複数の種類があり、特定技能はそのうちの一種です。
特定技能制度は、人材の確保が特に困難な状況にある特定産業分野で、一定の専門性・技能を有する外国人材の受け入れを促進するために国によって創設されました。受け入れ側にとっては、即戦力の人材を雇用できる点がメリットです。
特定技能人材の受け入れが可能な分野
現在、特定技能の対象分野は19分野ですが、一部分野は受け入れ開始に向けた準備段階にあります。以下では、現在主に受け入れが行われている分野を紹介します。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 自動車運送業
- 鉄道
- 林業
- 木材産業
上記分野のうち「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野は、2024年に追加されました。また、2026年1月23日には「リネンサプライ」「物流倉庫」「資源循環」の3分野の新たな追加が閣議決定されました。この追加により、特定技能制度の対象業種は19分野となります。これらの追加された3分野については、関係省令等の準備が整い次第、受け入れが可能となる予定です。
特定技能は制度の見直しや分野の追加がたびたび行われているため、最新情報は常にチェックしましょう。
特定技能1号と2号の違い
特定技能の在留資格は、1号と2号に分類されます。
特定技能1号は、原則として技能および日本語の検定に合格し取得できます。また、技能実習を良好に修了し取得する方法も存在しますが、技能実習を良好に修了した場合でも、特定技能へ試験免除で移行できるのは、対応する職種・作業が定められている分野に限られます。新たに追加された分野については、技能実習との対応関係が整備されていない場合があり、その場合は評価試験の合格が必要です。
特定技能1号の在留期間は通算で5年までです。配偶者や子といった家族の帯同は原則として認められていません。
また、特定技能1号の受け入れ機関は、適切な支援計画を作成し、計画に基づいたサポートを行わなければならないとされています。
一方で、特定技能2号は、1号より高い技術力が必要な検定や実務経験により取得できます。2号は在留期間の上限がなく、要件を満たせば配偶者・子の帯同が許可されます。1号と異なり、2号は受け入れ機関による支援の対象外です。
2024年に追加された自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野では、現時点では1号のみ受け入れ可能とされています。ただし、元々1号のみだった他分野で2号取得が可能になった例もあるため、制度の見直しにより、今後追加されることも予想されます。政府から発信される最新情報を確認しましょう。
なお、介護分野は移行先として「介護」の在留資格が個別に設定されています。
特定技能「航空」の概要

特定技能の航空分野では、制度の規定により従事できる業務内容が定められています。また、特定技能では分野ごとに受け入れ見込み数の上限が設定されているため、事前に理解しておきましょう。
- 特定技能「航空」で従事できる業務
- 特定技能「航空」での受け入れ見込み数・運用期間
- 育成就労制度「航空」の扱い
上記の3つをそれぞれ詳しく紹介します。
特定技能「航空」で従事できる業務
特定技能「航空」で外国人材が従事できる業務は、空港グランドハンドリングと航空機整備の2区分があります。加えて、1号と2号に業務内容が分けられており、それぞれの評価試験に合格することで、該当区分に従事可能です。
特定技能2号では、1号に比べてより専門的な業務に従事できます。具体的には以下のとおりです。
| 特定技能資格 | 業務区分 | 業務内容 |
|---|---|---|
| 1号 | 空港グランドハンドリング |
社内資格等を有する指導者やチームリーダーの指導・監督の下で行う以下の業務
|
| 航空機整備 |
|
|
| 2号 | 空港グランドハンドリング | 1号に定められた業務内容に加え、該当業務の工程を管理する業務 |
| 航空機整備 | 1号に定められた業務内容に加え、専門的・技術的な業務を、自らの判断により行う |
なお、事務作業や作業場所の整理整頓、清掃、積雪時における作業場所の除雪など、業務に付随する関連業務への従事も可能です。
出典:法務省「航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
特定技能「航空」での受け入れ見込み数・運用期間
特定技能の航空分野での外国人材の1号受け入れ見込数(受け入れ上限)は、5年間の運用期間においては4,900人と設定されています。制度開始時は2,200人でしたが、産業需要を踏まえて受け入れ見込み数の上限が見直されています。
今後も業務範囲や受け入れ見込み数は、その時の産業需要等を踏まえて見直しが行われる可能性があるため、最新情報は常にチェックしましょう。
出典:国土交通省「航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
育成就労制度「航空」の扱い
現行の「技能実習制度」でも、外国人材は航空分野に従事できます。しかし、技能実習制度の航空分野で従事できるのは、空港グランドハンドリング業務のみです。
また、「技能実習制度」は廃止が決定しており、2027年度から新たに「育成就労制度」が開始されます。「育成就労制度」は、特定技能に相当する人材を育成・確保することを目的とした制度という位置付けです。
2026年3月時点で、育成就労制度に航空分野は含まれていません。しかし、空港グランドハンドリングと航空機整備の業務区分のうち、空港グランドハンドリングに関しては、2026年度に育成就労制度への追加が検討されている状況です。
今後情報が更新されることが予想されるため、最新情報をチェックしましょう。なお、技能実習制度の廃止や育成就労制度の概要は以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
特定技能「航空」の在留資格を取得する方法
特定技能「航空」の在留資格を取得する方法を以下で詳しく解説します。
技能試験および日本語能力の検定に合格する
特定技能では、分野ごとに定められた技能検定および日本語能力検定の両方に合格すると、特定技能1号の在留資格を取得できます。
技能評価試験では、一定の基準以上の点数の獲得が必要です。日本および一部の海外で受験でき、受験できる国や試験の内容は各分野で異なります。試験内容は知識や判断力を問う学科試験のほか、実技試験が含まれる分野も存在します。
特定技能の航空分野で1号の資格を取得するためには、以下の試験に合格する必要があります。
- 航空分野特定技能1号評価試験に合格
- 日本語能力水準
- 「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」の合格
- そのほか、「日本語教育の参照枠」のA2相当以上の水準と認められるもの
航空分野特定技能1号評価試験は「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の2つに区分されています。前述しているとおり、区分によって従事できる業務が異なるため注意しましょう。
なお、航空分野の特定技能2号を取得するためには、対応する評価試験または所定の技能証明等に加え、必要な実務経験が求められます。特定技能2号の取得を検討している方は、別途条件の詳細を確認しておく必要があります。
「日本語教育の参照枠」とは、日本語の習得段階に応じて必要な教育内容・方法・評価を示す共通の基盤として策定された枠組みのことです。日本語教育の参照枠では、日本語能力を6段階に分けて設定しています。
A2の定義は「ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応じることができる」です。
技能実習2号を良好に修了する
技能実習2号を良好に修了した外国人は、一定の要件を満たすことで、航空分野の特定技能1号へ移行が可能です。ただし、移行できるのは対応する職種に限られます。
航空分野の場合、技能実習で受け入れている職種は空港グランドハンドリングのみです。そのため、技能実習から特定技能に移行する場合、「空港グランドハンドリング」への移行になります。
技能実習2号を良好に修了した者は、対応する職種に該当する場合に限り、航空分野特定技能1号評価試験が免除されます。なお、技能実習を良好に修了していれば、帰国後であっても試験免除の対象となります。
特定技能を取得するために外国人本人が満たすべき要件
特定技能の在留資格を取得する場合、外国人本人が満たすべき基準は以下のとおりです。
- 18歳以上である
- 健康状態が良好である
- 退去強制の円滑な執行に協力する国が発行した有効なパスポートを所持している
- 保証金を徴収されていない
- 外国の機関に費用を支払っている場合は、内容に合意している
- 送り出し国で遵守すべき手続が定められている場合、手続を経ている
- 食費・居住費など外国人が定期的に負担する費用の内容に合意している。また該当の費用の額が実費相当額その他の適正な額であり、明細書その他の書面が提示されている
- 分野特有の基準に適合している(※分野所管省庁の定める告示で規定)
- 特定技能1号の場合、特定技能1号での在留期間が通算5年に達していない
技能実習を修了済または検定に合格済の場合でも、要件を満たさない場合は特定技能の資格を取得できません。
出典:出入国在留管理庁「特定技能外国人受け入れる際のポイント」
特定技能「航空」で外国人材を雇用するメリット

続いて、特定技能の航空で特定技能人材を受け入れる場合のメリットを解説します。
一定水準以上の知識や技能を有した人材を確保できる
特定技能人材は、一定水準以上の知識やスキルを採用前に把握できる点が特徴です。日本語能力が高い外国人も多く、教育効率も高まります。特定技能人材は、即戦力を要する事業者と相性の良い人材です。
幅広い業務への従事が可能
技能実習制度では、技能実習生の受け入れ人数に制限があり、所定の人数までしか雇用できません。また、従事できる業務の内容や就労時間も限定的です。
特定技能は分野ごとに受入れ見込み数(上限)が設定されていますが、企業ごとの人数枠は原則設けられていません。人手不足が深刻な分野では大きなメリットです。
たとえば、技能実習制度では空港グランドハンドリング業務のみ従事可能ですが、特定技能制度では、定められた試験に合格し、条件を満たせば航空機整備業務にも従事できます。2号では、さらに専門知識・技術が求められる業務に従事できます。
長期の雇用が期待できる
特定技能1号の在留期間は通算5年までです。
2号は在留期間の上限がありません。人材の定着は受け入れ側にもメリットです。結果として、採用コストの削減効果も見込めます。
特定技能は、すでに日本に在留している外国人も取得できるため、取得が見込まれる人材がいれば移行を促してみるのも良いでしょう。
特定技能「航空」で外国人材を受け入れる際に企業が注意すべき点
航空分野で特定技能外国人材を受け入れる際の注意点を紹介します。
特定技能外国人材の受け入れを検討している方は参考にしてください。
特定技能受け入れ機関の基準
特定技能人材の受け入れ機関が満たすべき基準は以下のとおりです。
- 外国人と締結する雇用契約が適切である(記載すべき事項が揃っており、賃金水準は日本人と同等以上)
- 受け入れ機関自体が適切である(法令を遵守している・欠格事由に該当しないなど)
- 外国人を支援する体制がある
- 外国人を支援する計画が適切である(受け入れ機関は、1号特定技能人材を支援する計画を作成し、計画に基づいた支援の実施が必要)
加えて、航空分野特有の事業を鑑みて講じられる措置として、以下が定められています。
- 空港管理者により空港管理規則に基づく当該空港における営業の承認等を受けた事業者もしくは航空運送事業者または、航空法に基づき国土交通大臣の認定を受けた航空機整備等に係る事業場を有する事業者もしくは当該事業者から業務の委託を受ける事業者であること
- 国土交通省が設置する協議会に参加し、必要な協力を行うこと
- 国土交通省等が行う調査や指導に対し、必要な協力を行うこと
- 1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合は、条件を満たす登録支援機関に委託すること
航空分野で特定技能外国人の受け入れを考えている企業の方は、上記の基準を遵守しましょう。
特定技能外国人の受け入れ後に企業がやらなければならないことは?
特定技能人材の受け入れ機関には一般的に以下の義務が課されます。
- 外国人と締結した雇用契約を確実に履行する
- 外国人への支援を適切に実施する(1号のみ)
- 出入国在留管理庁およびハローワークへの各種届出
- 報酬は預貯金口座への振込に限定する
上記は分野に限らず、特定技能を受け入れる機関の義務です。怠ると、外国人の雇用ができなくなるほか、行政から指導や改善命令を受ける対象になります。また、各種届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりすると罰則の対象になるため注意しましょう。
以下の記事では、外国人材を雇用する際のメリットやデメリット、雇用時の手続きを詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
特定技能「航空」ではより専門的な業務や航空機整備業務への従事が可能
航空業界は人手不足が深刻化している業界のひとつです。近年、外国人観光客が急速に増加している反面、需要に対して人材の確保が追いついていません。
人手不足の状況を解消するため、特定技能で外国人材の受け入れが行われています。特定技能では技能実習や育成就労では就労できない、航空機整備業務への従事も可能です。2号に移行すればより専門的な業務への従事も可能になります。
航空関連の業務に従事しており、外国人材の雇用を検討している方は特定技能外国人材の雇用を検討しましょう。
ただし、制度で定められた規則を守らなければ、受け入れ停止措置や罰則が科されるため注意が必要です。はじめて外国人材を雇用するなら、専門的な機関に頼ることも検討しましょう。
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