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大胆な意思決定と行動ができる
トップ層からの指示を待つのではなく、現場の社員一人ひとりが状況を判断し、自律的に行動。アサーティブネス(自己主張と相手への配慮を両立させる姿勢)を持って周囲を巻き込むリーダーシップ。 -
多様な人材が活用できる
グローバル化やダイバーシティの進展により、組織内のメンバーの価値観や専門性は多様化している。異なる強みを最大限に引き出し、共通の目標へ結集させる柔軟なリーダーシップ。
リーダーシップとは?種類やリーダーシップ理論の変遷、企業ができることを解説!
2025/12/26

市場の不確実性が高まり、テクノロジーが急速に進歩する昨今、企業が競争優位性を維持するためには、変革を牽引できるリーダーシップのある人材の存在が欠かせません。その理由は、従来の管理型マネジメントに依存する組織では、時代の変化にスピーディーに対応するのが難しいからです。
そこでこのページでは、企業に求められるリーダーシップやリーダーシップ理論の変遷、組織の状況によって使い分けるべき代表的な6つの種類について解説します。さらに、経験を通して社員のリーダーシップ能力を体系的に高めるための育成方法についても紹介していますので、組織づくりのヒントとしてご活用ください。
リーダーシップ開発について、以下の資料でも詳細をご確認いただけます。ぜひこちらもご確認ください。
この記事の目次
リーダーシップとは?
リーダーシップとは、一般的に組織や集団において目標達成のためにメンバーを導き、影響を与え、行動を促すプロセスや能力のことを指します。
明確な定義はなく、使用される文脈や時代によってもその意味は異なります。
現代のビジネス環境においては、単に「役職者が指揮命令を出す」という行為を指すのではありません。役職や階層に関係なく、組織の掲げるビジョンや目標を実現するために周囲を巻き込み、最大の成果を引き出す力として使われることも多い概念です。
リーダーシップとマネジメントの違い
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概要
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|---|---|
| リーダーシップ | 特定の目標を達成するために人や組織に対して働きかけ、変革を促す能力 |
| マネジメント | 組織の限られたリソースを効果的に活用して目的を達成する管理能力 |
リーダーシップは「指導力」や「統率力」の意味合いで使用され、特定の目標を達成するために人や組織に対して働きかけ、変革を促します。
一方、マネジメントは、組織の限られたリソースを効果的に活用して目的を達成する能力、成果を上げさせるための管理能力です。
つまり、リーダーシップは人に働きかける能力、対してマネジメントは人に限定せず、さまざまなリソースをやりくりする能力と考えられます。
リーダーシップ理論の変遷
リーダーシップという概念をどのように考えるか?は時代によっても大きく変わります。リーダーシップ理論の変遷をご紹介します。
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理論
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概要
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|---|---|
| 特性理論 | 優れたリーダーには共通する特性があると考える古典的な理論。 |
| 行動理論 | 優れたリーダーに共通する特定の行動があると考える理論。 |
| 条件適合理論 | その時々に応じて、優れたリーダーに共通する特定の行動は変化すると考える理論。 |
| コンセプト理論 | 条件適合理論を継承し、具体的なビジネスシーンごとに優れたリーダーシップのあり方を検討する理論。 |
リーダーシップ研究は長い歴史の中で、組織や社会の変化に合わせながら発展してきました。初期に登場した特性理論は「優れたリーダーには共通する性質や資質がある」という前提に立ち、その特性を探ろうとしました。
しかし、明確な共通点を見いだすことができず限界が指摘されます。そこで次に登場したのが行動理論です。これは能力ではなく行動に注目し、「優れたリーダーには共通する行動パターンがある」と考えましたが、状況によって最適な行動が変わることが分かり、万能ではないとされました。
この反省から生まれたのが条件適合理論です。リーダーのあり方は場面や状況に応じて変化するべきであり、どのタイプが優れているかは固定的ではないとする考え方です。
さらにこの考えを発展させ、具体的なシーンや課題に応じて、どのようなリーダーシップが最適かを体系的に整理したものがコンセプト理論で、現代のリーダーシップ研究の主流として多くの組織で採用されています。
現代にリーダーシップが必要とされる背景
現代のビジネス環境はVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と呼ばれ、テクノロジーの急速な進化、グローバル化の進展に加え、異業種からのディスラプション(業界の枠を超えた革新的な新規参入)などの要因により、市場の変化スピードが加速しています。
このような状況で、組織全体が迅速に適応し、イノベーションを生み出し続けるためには、組織風土や行動規範を変えることが求められているでしょう。そして、その原動力となるのがリーダーシップと考えられているのです。
Adecco Groupが2023年10~12月にかけて9カ国の経営幹部を対象に実施した調査では、59%が「リーダーシップ開発を強化している」と回答しています。
Q.自社のリーダーシップの開発を強化しているか
出典:Adecco Group「Leading Through the Great Disruption」, https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/330
従来の維持・管理を重視したマネジメント人材は豊富にいても、変革の牽引と未来への創造を担うリーダーシップ人材が不足していることが、多くの企業にとって喫緊の課題となっていることがわかります。
また、同調査の分析結果から、現代に求められるリーダーシップ像は、下記のようなポイントが挙げられます。
<求められる現代のリーダーシップ像>
ディスラプションについて詳しくは下記のページでも解説しています。気になる方はこちらも併せてご確認ください。
代表的なリーダーシップの種類と特徴
組織が直面する課題や、チームの成熟度は常に変化するため、特定の状況に応じてリーダーシップのスタイルを使い分けられる多面性が、現代のリーダーには求められるでしょう。
ここでは、EQの概念を組織論に応用したアメリカの心理学者ダニエル・ゴールマン氏が提唱した、代表的な6つのリーダーシップの種類と特徴について解説します。
<リーダーシップの種類>
- ビジョン型リーダーシップ
- コーチ型リーダーシップ
- 親和型リーダーシップ
- 協働型リーダーシップ
- 先導型リーダーシップ
- 指示命令型リーダーシップ
1.組織に明確な方向性を示す「ビジョン型リーダーシップ」
ビジョン型リーダーシップは、組織の最終的な目的地を明確に示し、メンバーに夢や意義を共有することで、熱意とコミットメントを引き出すスタイルです。組織全体が方向性を見失っているときや、大きな変革期に有効といえます。
2.メンバーの潜在能力を引き出す「コーチ型リーダーシップ」
コーチ型リーダーシップは、メンバー一人ひとりの長期的な成長やキャリア目標に焦点をあて、対話(コーチング)を通じて自発的な能力開発を支援するスタイルです。メンバーが自律的に成長することを望んでいる組織で力を発揮します。
3.チーム内の調和と士気を高める「親和型リーダーシップ」
親和型リーダーシップは、人間関係や感情的なつながりを優先し、チーム内の信頼感と一体感を醸成するスタイルです。危機後の修復やメンバー間の対立解消など、心理的な安全性の確保が必要な場面で有効といえます。
4.メンバーの意見を活かし合意形成を図る「協働型リーダーシップ」
協働型リーダーシップは、メンバーの意見を幅広く聴取し、合意形成を重視しながら意思決定を行うスタイルです。意見を尊重することで参画意識を高め、質の高い判断を引き出します。
5.高い基準で迅速な実行を促す「先導型リーダーシップ」
先導型リーダーシップは、リーダーみずからが模範として高いパフォーマンス基準を示し、メンバーを鼓舞し、迅速かつ質の高い実行を求めるスタイルです。優秀なメンバーで構成され、迅速な結果が求められる場面に適しています。ただし、多用することで士気低下を招くリスクがあるため、注意しましょう。
6.組織に明確な指示を与え、遵守を求める「指示命令型リーダーシップ」
指示命令型リーダーシップは、実行すべきタスクやルールを明確かつ厳格に指示し、メンバーに厳密な遵守を求めるスタイルです。緊急事態や危機的な状況、あるいは経験の浅いメンバーを導くときに有効といえます。
人材のリーダーシップ能力を高めるために企業ができること
リーダーシップ能力は、知識の習得だけでなく、意図的かつ体系的な経験を通じて研鑽されるものです。そのため、企業は全社員がリーダーシップを発揮できる環境を整備することが求められます。具体的な育成方法は、下記のとおりです。
<リーダーシップを高めるためにできること>
- 研修プログラムによる体系的な知識とスキルの習得促進
- 体系的な経験学習サイクルの設計
- 外部サービスを活用した人材開発
研修プログラムによる体系的な知識とスキルの習得促進
理論的な知識と実践的なスキルを体系的に学ぶための社内研修は、リーダーシップ能力の開発の土台となります。リーダーシップ醸成のための方法には、下記のようなものが挙げられます。
<リーダーシップを醸成する方法>
- 理論学習の提供:リーダーシップ論、組織行動学、戦略的思考といった学術的な知識を習得し、自己の行動を理論と結び付けて内省できるように促す
- 実践的スキル研修:コーチング、フィードバック、ファシリテーションなど、リーダーが現場で直接使用する具体的なスキルに焦点をあてたロールプレイング形式の研修を実施する
- アセスメントの活用:個人の特性、現在のリーダーシップスタイル、潜在的な強みや弱みを客観的に把握できるアセスメントを定期的に実施し、自己認識を深めた上での能力開発目標設定を支援する
体系的な経験学習サイクルの設計
経験を単なる体験で終わらせず、学びへと昇華させるためには、組織行動学者のデイビッド・A・コルブ氏が提唱した「経験学習サイクル」を組織的に設計することも有効です。
人事部門は、このサイクルを継続的に回すためのメンター制度やフィードバック文化を確立させ、誰もがリーダーシップを発揮できる環境を整備することが重要でしょう。
<経験学習サイクルの流れ>
- 具体的経験:挑戦的なプロジェクト、新規事業の立ち上げ、異部門への越境学習など、リーダーシップの発揮が不可欠な場を意図的に設定する
- 内省(リフレクション):経験後に何が起こったか、なぜ成功・失敗したかを振り返り、深く考える時間と機会を提供する(例:内省ワークショップ、レポート提出)
- 概念化:内省で得た気づきや教訓を言語化し、一般化することで、ほかの状況でも応用できる知識へと昇華させる
- 試行:概念化された教訓を基に次の行動計画を立て、実践に移す
外部サービスを活用した人材開発
内部の育成リソースやノウハウだけでは、リーダーシップの醸成がうまくいかなかったり、社員同士の相乗効果が期待できなかったりする場合は、外部の専門サービスを戦略的に活用する方法もおすすめです。人材開発のための外部サービスの活用例には、下記のようなものが挙げられます。
<人材開発のための外部サービス活用例>
- エグゼクティブ・コーチングの導入:次世代リーダーや経営層に対し、外部のプロフェッショナルコーチによる個別指導を提供し、自己変革と意思決定能力の向上を促す
- 専門家による研修:DXやグローバル経営など、高度な専門知識が求められる分野のリーダーシップ開発についてはその道の専門家を招き、最先端の知見を組織に取り込む
リーダーシップを発揮する人材の育成が組織づくりのカギ
現代において、企業が直面する課題は複雑であり、もはや組織のトップに立つ人材のカリスマ性だけでは解決できません。変化の激しい環境を乗り切るためには、組織の階層や部門を超えて、一人ひとりがリーダーシップを発揮していくことが重要と言えるでしょう。
人事・採用担当者は、単に管理職を任命するだけではなく、多様な状況にも対応できるリーダーシップ人材を、戦略的に育成・確保することが重要です。人材の継続的な育成こそが、変化の激しい時代を勝ち抜き、持続的な成長を実現するための組織づくりのカギをにぎるでしょう。
アデコでは、リーダーシップ開発のために役立つ資料を提供しています。ぜひご活用ください。


