【人財躍動化コンサルティング活用事例】 評価・育成基準を「自分ごと」に。エス・エム・エスが取り組んだ、現場巻き込み型の組織開発プロジェクト

評価・育成の基準は、内容が正しいだけでは現場に根づきません。その基準を使う人、評価される人、そして育成を担う人が、どこまで「自分ごと」として受け止められるかが、運用の成否を左右します。
株式会社エス・エム・エス様は、事業成長の要となる管理職の育成に向けて、アデコの組織開発コンサルティングを活用。育成対象である管理職自身も巻き込みながら、ワークショップを通じて「求める役割」や「スキル」を定義するところから取り組みました。本記事では、同社がこのプロジェクトに取り組んだ背景、アデコを選んだ理由、そして導入後に生まれた変化について伺いました。
インタビュー協力
株式会社エス・エム・エス
医療キャリア事業本部 ナース専科転職事業部・部長
北川純也 さま
株式会社エス・エム・エス
医療キャリア事業本部 コメディカル人材紹介事業部・部長
鳥居拓郎 さま
株式会社エス・エム・エス
医療キャリア事業本部 組織開発グループ・グループ長
トリコリ雅貴 さま
株式会社エス・エム・エス
キャリア人材開発部 人事企画グループ・グループ長
神原慧 さま
株式会社エス・エム・エス
医療キャリア事業本部 コメディカル人材紹介事業部 コメディカル組織開発グループ・グループ長
鈴木菜々 さま
導入前の課題
- 人材紹介事業そのものが転換点を迎える中、戦略実行を担うグループ長に何を期待し、どの能力を伸ばすべきかが十分に言語化されていませんでした。研修や機会提供は行っていたものの、個々の成長やキャリア形成へつなげるための共通基盤が課題となっていました。
Adeccoを選んだ決め手
- 複数社に相談する中で、アデコさんは研修メニューの提案にとどまらず、「まず土台を作りませんか」と、役割やスキルの定義から始めるアプローチを提示してくれました。外部ならではの客観性に加え、当社の事業理解を重視する姿勢にも納得感があり、共に進められるパートナーだと感じたことが決め手でした。
導入後の成果・効果
- グループ長に求める能力が共通言語化されたことで、評価する側・される側の認識が揃い、育成の対話が具体化しました。また、「人材育成力」や「納得形成力」など、抽象的になりがちだったテーマも、現場で扱いやすい言葉として浸透し始めています。さらに、数値管理や戦略策定だけでなく、「人財を通じて成果を生み出す存在」としての意識が高まりつつあります。

人材紹介事業の転換点。管理職の能力要件を見直す必要があった
樽磨今回のプロジェクトは、医療キャリア領域におけるグループ長の役割やスキルを定義し、今後の育成につなげていく取り組みでした。なぜこのタイミングでグループ長の能力要件を見直す必要があったのか、また、単に研修を実施するのではなく、能力要件やスキル定義から見直すことにどのような意味があったのか、お聞かせいただけますか。
北川さま2040年という節目を見据えたとき、看護師の労働力不足がピークを迎えると言われています。そうした環境変化の中で、これまで私たちが築き上げてきた人材紹介事業も、まさに転換点に差しかかっているという認識がありました。加えて、AIの台頭によって、業務のあり方そのものも変わっていきます。
これまでのやり方をそのまま続けるだけでは、今後の事業成長を支えきれない。そうした危機感がありました。その中で、戦略の実行者であるグループ長の能力要件を、改めて見直す必要があると感じたことが、今回の取り組みの出発点です。
必要性や課題感自体は、以前からありました。ただ、正直なところ、どこか見て見ぬふりをしていた部分もあったと思います。事業環境の変化に伴い、グループ長に求められる役割も変わっていく。それにもかかわらず、能力要件の定義を十分に見直せていませんでした。だからこそ今回、能力要件定義を見直すことにきちんと向き合う必要がありました。
今回の意義は、単に新しい定義を作ったことだけではありません。会社として、管理職にどう変わってほしいのか、グループ長に何を期待しているのか、どのような能力が求められているのか。そうした点を改めて言語化できたことが大きかったと思います。
もし最初から「研修をやろう」という形で入っていたら、ここまで現場との接続は生まれなかったかもしれません。研修はもちろん重要です。ただ、その前に、何を目指すのかが見えていなければ、本人たちにとっても自分の仕事や役割と結びつけにくい。だからこそ、能力要件の定義から始めることには意味があったと思います。

評価・育成・キャリアの現場にあった「モヤモヤ」
樽磨事業環境が変化する中で、実際の育成や評価、キャリア形成の現場では、どのような課題感や違和感があったのでしょうか。また、これまでのマネージャー向け研修や機会提供については、どのように見ていらっしゃいましたか。
トリコリさま個別の課題はいろいろあったと思いますが、私自身でいうと、自分の部下に対して、正しい能力開発や、その人に必要なサポート、フィードバックがちゃんとできている感覚がなかったんです。会社全体で見ても、部長陣がそれぞれ部下を評価しているものの、見ているポイントや評価基準が本当に揃っているのか。あるいは、揃っているかどうかもよくわからない。そこには、ずっとモヤモヤがありました。グループ長は、組織の成長にも事業の成長にも大きく影響を与えるポジションです。私自身もグループ長を経験しているので、その重要性は感じていました。ただ一方で、グループ長の育成は、どこか後回しになったまま進んできてしまったところもある。競合も増えてくる中で、組織が大きく変わらなければならないフェーズに入っていたので、グループ長の育成にきちんと取り掛からなければいけない。でも、何から始めればいいのかが見えていない。それが当時の状態だったと思います。
組織開発の立場から、半年に一度、グループ長陣にキャリアに関するアンケートを実施する機会があるのですが、そこでも「今後どうなっていけばよいのか」という声をいただくことがありました。「グループ長になったものの、次が見えない」とか、「チームリーダーからグループ長に上がる際にも壁が高すぎる」といった声も一定数寄せられていたのが実情です。
鳥居さまこの2〜3年で、マネージャー向けの研修や機会提供はかなり実施してきたと思います。内容自体も、決して悪いものではありませんでした。ただ、それが参加者本人の成長や、その先のキャリアに十分つながっていたかというと、必ずしもそうではありませんでした。振り返ると、私たち自身が「グループ長にどうなってほしいのか」「どの力を伸ばすことが、事業にとっても本人にとっても意味のあることなのか」を、十分にすり合わせられていなかったのだと思います。つまり、土台が整っていない状態で、Howばかりを提供していたんですよね。今振り返ると、まずはその前提となる役割や期待値を明確にする必要があったと感じています。

「まず土台を作りませんか」。その提案で車輪が回り始めた
樽磨複数の会社に相談されていた中で、なぜアデコを選び、外部に依頼する判断に至ったのでしょうか。
トリコリさま当時を振り返ると、いろいろな会社に声をかけていました。おそらく、全部で六、七社くらいには相談していたと思います。研修メニューをご提案いただく会社もあれば、新しい仕組みの導入を提案してくださる会社もありました。その中で、アデコさんだけが「そもそも一回、土台を作りませんか」と言ってくださったんです。それを聞いたときに、「その発想はなかった」と思いましたね。私たちから「定義を作ってください」とお願いしたというより、会話の中でその提案をいただいて、「それ、いいかもしれない」と車輪が回り始めた印象があります。いろいろな提案を並べてみたときに、やはり根幹から取り組むべきだよね、という話になりました。そこから社内でも稟議を取り、プロジェクトとして動き始めた形です。
鳥居さま管理職育成に本気で向き合うなら、自分たちだけで進めるのではなく、外部の力を借りるべき部分もあると考えていました。一方で、私たちなりのこだわりもあります。外部の客観性は欲しいけれど、エス・エム・エスらしさを理解しないまま進められるのは違う。その点、アデコさんは、客観的な視点を持ちながら、私たちのことを理解しようとしてくれました。私たちに足りない部分を補いながら、良い部分もきちんと見てくれる。だからこそ、一緒に良いものを作れるのではないかと思いました。
神原さま当社は、どうしても内製化しがちな会社です。だからこそ、外部のプロフェッショナルにお任せする価値は高いと感じました。単にパッケージを導入するのではなく、アデコさんにお願いしたからこそのプロセスがあった。そこに、非常に大きな価値があったと思います。

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詳細はこちら「決めるプロセス」に関わることで、基準が自分ごとになる
樽磨今回のプロジェクトでは、部長層や人事だけでなく、育成対象であるグループ長の皆さんにもワークショップへ参加いただきました。評価や育成の基準を当事者と一緒に作っていくことには、どのような意味があったのでしょうか。また、会社から一方的に示すのではなく、グループ長自身も策定に関わることで、受け止め方にはどのような変化があったと感じていますか。
北川さまグループ長の段階から巻き込めたことは、とても良かったと感じています。今回の意義は、単に新しい定義を作ったことだけではありません。一緒に策定する、そのプロセス自体に大きな意味がありました。こうした基準は、評価者側だけで作ることも多いものです。
今回は、被評価者側でもあるグループ長も巻き込み、一緒に考えました。だからこそ、「人材育成力が少し足りないかもしれない」といった話も、一定の共通認識を持った状態で始められるようになったのだと思います。
プロセスを大事にしたからこそ、指摘に対する納得感も生まれ、その中に含まれる具体的なスキルの話もしやすくなりました。育成を目的にしたプロセスそのものが、結果的にさまざまな場面で効いていると感じています。
また以前は、グループ長の能力要件は会社から与えられるもの、という感覚が強かったと思います。けれど今は、自分たちで考え、決めたものだという感覚がある。だからこそ、より身近に感じられるようになりましたし、事業部間での共有にもつながっているのだと思います。
鳥居さま一方で、正直に言うと、グループ長を巻き込むことに不安もありました。私たちが求めたい能力と、彼ら自身が高めたい能力がずれたときに、結果的に無理やり寄せるような形にならないかと思っていたんです。そうなると、彼ら自身が作り上げていくことや、納得形成とは少し違うものになってしまうのではないかと。
ただ、結果的にはやってよかったですね。ギャップを感じる場面もありましたが、対話を通じて、グループ長自身が自分の役割をきちんと理解していることも見えてきました。あのワークをやらなければ、私自身もそこには気づけなかったと思います。
トリコリさま一緒に作り上げたんだ、というプロセス自体に価値があると思います。人事施策は、どうしても上から落としがちで、現場に浸透しにくいこともあります。でも、一緒に作ったからこそ、運用を形骸化させずにやっていこうという結束感や団結感が生まれる。だからこそ、プロセスから巻き込んでいくことが重要なのだと感じました。

共通言語が生まれ、育成の会話が具体化した
樽磨スキル定義を進める中で、当初想定していなかった発見や、導入後に見えてきた変化はありましたか。
北川さま個人的には、当社は「戦略・人材・オペレーション」で考えがちです。それ自体は悪いことではなく、大切なポリシーでもあります。ただ、それとは別に「基盤能力」があるよね、というところに最後に定まったのは、当初あまり想定していなかった動きでした。なんとなく暗黙でみんなが話していたものが、そこでビシッとはまった感覚がありました。すごく綺麗にパズルのピースがはまったような感じです。当初は想定していなかった着地でしたが、今はすごくしっくりきています。
今回特に良かった点は、グループ長たちの景色が変わってきたことです。これまでは、グループ長の仕事といえば数値管理や戦略策定が中心だという認識が強かったと思います。もちろんそれも重要です。ただ、実際には「人財を通じて成果を生み出す存在である」ということを、より実感を持って捉えられるようになってきました。1on1にしっかり時間を使うようになったり、マネジメントのあり方そのものに対する見方が変わってきたりしています。現場に入って、現場を知った上で発言することの重要性や、何を優先すべきかという感覚にも変化が見えてきています。
以前は、グループ長の能力要件は会社から与えられるもの、という感覚が強かったと思います。けれど今は、自分たちで考え、決めたものだという感覚がある。だからこそ、より身近に感じられるようになりましたし、事業部間での共有にもつながっているのだと思います。
鳥居さま例えば「対人能力」という言葉だけだと、かなり抽象度が高いと思います。今回はそうした言葉を、「発信・表現力」「関係構築力」「権限移譲力」などの具体的な項目に分解していただきました。それによって、本人も「状況対応力が足りないんだな」といったような感覚を持てますし、「対人能力の中でも、『納得形成力』を上げていくと、こういうところが良くなるよね」という話もできるようになりました。これは、非常にありがたかったです。
鈴木さま共通した言葉ができたことで、会話のしやすさは大きく変わったと感じています。
たとえば、これまでも大切にしてきた考え方や言葉はありました。ただ、それぞれが少しずつ違う意味で受け取っていることもあったと思います。今回、求められる力を具体的な言葉に分解したことで、「この言葉は、こういう行動を指しているんだ」と揃えやすくなりました。そうすると、自分たちグループ長に求められていることだけでなく、近くにいるチームリーダーには何を求めるべきか、という視点にも広がっていきます。自分たちの役割を考えることが、次の育成を考えることにもつながっている感覚があります。
これまでも、いろいろな「武器」を渡されてきたような文化はあったと思います。使えるものはたくさんある一方で、それを自分の組織の中で、いつ、どの場面で、どう使うのかまで考える機会は、十分ではなかったのかもしれません。今回のワークショップでは、自分の組織でそれをどう使うのかを考え、それぞれが意思を持って発言できる場がありました。そこはすごく新鮮でしたし、皆さんの思考が開けたり、深みが出たりする場面を見られた印象があります。

型を当てはめず、運用まで見据えて対話を重ねる
樽磨アデコとの協働について印象に残っていることはありますか。
トリコリさまプロジェクトの中でも、作成した内容を現場にどう浸透させていくかを詰めていた時期が、一番の山場だったと思います。体制変更もありましたし、資料についても「やっぱりこうした方がいいのではないか」という議論が重なっていました。いろいろな意見が出て、どう整理すればよいか悩む場面もあったんです。その度にアデコさんが、状況を客観的に整理してくださったことが、とてもありがたかったですね。煮詰まってくると、どうしても議論が広がってしまいます。夏苅さん(※)も、要所要所で方向性を整えてくださいました。
内製で進めていたら、「もう一時間話しましょうか」という会議が何度も繰り返されていたかもしれません。そういう意味でも、プロジェクトを強力に進める力を感じました。
(※夏苅正史……アデコのコンサルタント。この度、樽磨と共にエス・エム・エス様を支援した)
鳥居さま樽磨さんは、一貫して「わからない」ところを曖昧にしない方でしたね。表面的にまとめて終わらせるのではなく、「これはこのままでいいのだろうか」と向き合ってくださる。時間内にすべてをキャッチアップしきれなかったとしても、次までに必ず持ってくるという気概を感じていました。その信頼残高が、どんどん積み上がっていった感覚があります。時間の制限があると、一番やりやすい方法や、勝率の高い方程式で進めたくなると思うんです。でもアデコさんは、最後まで泥臭く、時間ギリギリまで粘ってくださいました。それが最終的に良いものを作れた理由だと思います。数あるコンサルティング会社の中でも、最後の最後まで、運用に落とし込まれるところまで想像して対話してくださったことが、圧倒的に良かったです。
神原さま当社のことを理解しようとしてくださる姿勢が、一番ありがたかったです。事業や会社の解像度が高くないまま提案されると、「実態と違うのに」という壁ができてしまいます。アデコさんは、わからないことをその場で聞いてくださるし、こちらの事情を理解した上で、ではワークにするならこういうプロセスが良さそうですよね、とかなり汲み取ってくださいました。今ある型をただ当てはめるのではなく、私たちに寄せてカスタマイズしていただけている感覚がありましたね。

自分ごと化を起点に、評価制度との連動・他部門展開へ
樽磨今回の取り組みは、同じように管理職育成や評価制度の運用に悩む企業にとっても示唆があるように感じています。特に大事だったこと、そして今後この取り組みをどのように発展させていきたいかについてお聞かせください。
北川さま重要なのは、対象者にどこまで自分ごととして捉えてもらえるかだと思います。多くの現場では、管理職やその候補者が「自分には何が求められているのか」「どう成長していけばよいのか」を十分に理解できていないことが少なくありません。能力のある人材がいても、期待役割や成長の方向性が曖昧なままだと、せっかくの人たちが埋もれてしまう。そうした状況は、決して珍しいことではないと思います。
だからこそ、会社側が一方的に要件を与えるのではなく、「何を期待するのか」「どういう力が必要なのか」を決めるプロセスそのものに、本人たちが関わることには大きな意味があります。
自分たちで考え、言葉にし、納得しながら形にしていくことで、それが「与えられた基準」ではなく、「自分たちが目指すもの」に変わっていく。そのプロセス自体が、育成の大きな一歩になるのだと思います。
今後の発展という意味では、やはり評価制度との連動が目下の課題です。また、将来的には介護をはじめとした他部門にも広げていきたいと考えています。そして、これから求められる能力要件が変わっていくのであれば、それに合わせて、この定義自体もアップデートしていく必要があると感じています。
鳥居さま今はようやくスタートラインに立てた段階です。これをしっかり運用に乗せて、当初やりたかったように、グループ長の能力を引き上げ、彼らが事業を牽引する存在になっていく。そして結果的に、お客様から選ばれるサービスになっていくことがゴールです。そこまでやり切ることが、アデコさん、樽磨さん、夏苅さんへの「ありがとうございました」という結果にもなると思っています。

※本記事は2026年4月30日の取材を元に作成しました。
アデコ株式会社 コンサルタント紹介

(アデコ株式会社 コンサルティング事業本部)
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