【活用事例】 アルバルク東京の組織改革/後編 「プロスポーツクラブを加速させる人事制度設計」

プロスポーツ業界の「当たり前」に向き合う。
「プロフェッショナルに責任を求め、貢献に報いられる組織になっているか。」
「仕事を通じて人が成長し、自分の可能性を広げられる組織になっているか。」
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は掲げたら、実装しなければならない。その第一歩として取り組んだのが、MVVを日々の意思決定や評価、育成にまで貫く仕組みへと落とし込むこと。
挑戦や成果を、その場限りの評価で終わらせないこと。
判断を、個人の感覚ではなく、組織として共有できる基準に置き直すこと。
アルバルク東京(以下、アルバルク)が次に踏み込んだのは、MVVを人事制度と日々の運用に接続する極めて現実的な領域です。
後編では、「理念を掲げる組織」から「理念で判断し、評価し、育てる組織」へ。アルバルクが挑んだ人事制度設計のリアルを通して、プロスポーツ業界全体に問いを投げかける取り組みの核心に迫ります。
【活用事例】 アルバルク東京の組織改革/前編 避けて通れなかった問い。社会におけるプロスポーツクラブの価値とは。
インタビュー協力
トヨタアルバルク東京株式会社
取締役 兼 経営企画部長
浅野 英朗さま
トヨタアルバルク東京株式会社
経営企画部 企画室 室長
栗盛 謙さま
導入前の課題
- MVVの策定が完了。理想を組織に実装するためには、評価や処遇といった人事制度を刷新する必要があった。
Adeccoを選んだ決め手
- アルバルク東京の置かれた状況や思想を親身に理解しようとするスタンスと、経験豊富なプロフェッショナル性。
導入後の成果・効果
- プロスポーツ業界においては先進的ともいえる人事制度の導入に至った。
「子どもに伝わる仕事」が、スポーツビジネスへの入口だった
森インタビューの入口として伺いたいのですが、栗盛さんはサッカーを長く経験されてきました。プロスポーツクラブで働くという選択には、ご自身のキャリアや価値観が強く反映されているように感じます。まず、スポーツビジネスに携わりたいと思われた原点は、どんなところにあったのでしょうか。
栗盛さま一番大きかったのは、すごくプライベートな理由ですが、「子どもに伝わる仕事がしたい。」という思いでした。それまで銀行やコンサルティングの仕事をしていましたが、どちらも子どもに説明は分かりにくい仕事でしたから。
その点、スポーツの仕事には見える世界があります。アリーナにお客さんが集まり、選手がいて、試合があって、会場が盛り上がる。「パパはバスケットボールクラブで、お客さんに楽しんでもらうお手伝いをしているんだね」と、子どもにそのまま伝わる。そういう仕事に魅力を感じました。
もう一つ大きかったのは、お客さんから直接フィードバックをもらえることです。勝てば一緒に喜んでもらえるし、負けても「次、頑張ろう」と声をかけてもらえる。そういうフィードバックをもらえるのは、この仕事ならではの魅力だと思っています。
森「子どもに伝わる仕事」であることと、「お客さまから直接フィードバックが返ってくること」。その二つが、栗盛さんにとってスポーツビジネスを選ぶ決定的なポイントだったのですね。

「憧れ」と「働く」は重なる。ただし辞める人はゼロではない
森プロスポーツクラブで働くことに強い憧れを抱く方は多い一方で、実際に働き始めると、理想と現実のギャップに直面する場面も少なくはないと聞きます。栗盛さんは、「憧れ」と「働く」の一致、不一致について、どう捉えていますか。
栗盛さま私も知る限りのことしか言えませんが、憧れや「ここでやりたい」という気持ちがちゃんと叶えられる仕事だと思っています。なので、入ってみて「思っていたのと全然違う」「幻滅した」という理由で、次々に辞めていく、という感じではありません。もちろん、楽な仕事ではないですし、責任も重いです。でも、その厳しさも含めて「分かった上で来ている人」が多い印象です。ピュアな想いが原動力になって活動している人が多いと思います。それは素敵ですよね。
森一方で、まったくギャップがないわけではない、と。
浅野さまそうですね。当然、何がしかのギャップを感じて辞める人はゼロではありません。ただ、それは憧れが裏切られたというより、「仕事として向き合ったときに、求められるものの重さに合わなかった」というケースが多いと思います。

「11人で回るクラブ」から「100人でスケールする組織」へ
森制度改定の出発点を振り返りたいのですが、2024年8月にご提案をお出しし、9〜10月頃にキックオフしてから、約1年にわたって取り組んできました。当時、どのような思いや課題意識をお持ちだったのか、改めて伺えますか。
栗盛さま根本にはMVVを制度に実装させたいという想いがありましたが、それを実現するためには、具体的に3つの組織課題がありました。
一つは、新しいアリーナの建設や運営に伴って、事業の複雑性が増したこと。もう一つは、そうした新しい事業を担う人材が加わったことで、組織の人員構成が一気に多様化したこと。
そしてそれと並行して、これまでやってきたバスケットボール事業の規模も拡大したため、組織能力に質的な変化が求められる、いわゆる「30人の壁」が見えてきていたこと。企業としてのトヨタアルバルク東京株式会社は、B.LEAGUE(以下 Bリーグ)が発足した10年前に11人で立ち上がったクラブです。そこから少しずつ規模が大きくなってきました。その結果、当時のサイズに合わせた仕事の進め方や、評価・処遇の設計が残っている状態でした。
小さな組織だと、「この仕事はこの人」という仕事の進め方が最も効率的です。しかし、組織が大きくなっていくと、そのやり方だと行き詰ってしまう局面が来ます。そこを乗り越えていくためには、マネージャーがチームを導き、目的や基準を共有した上で、対話を通じて意思決定を行い、成果を出しながら、育成し、評価するという、組織としての進め方へ変えていかなければなりません。今のアルバルクは、そうした質的変化の過渡期にあります。
そしてそうした新しいスタイルに適応する人たちを育てて、きちんと処遇できる制度にすることが、今後の成長につながる。そのための制度改定が必要だと考えていました。

「成長痛」を一緒に乗り越えていきたい
森スポーツビジネス特有の課題として、どのような点が大きいと感じていらっしゃいますか。
栗盛さま「プロスポーツクラブ」と一括りにすると幅がありますが、ことBリーグで言えば、「小さい組織から始まり、短期間で急拡大してきた」という点は、多くのクラブに共通していると思います。
10名程度で始まり、20人、30人と増えていく段階では、拾えるものを全員で拾い、とにかく回す。意思決定も社長と直談判して決める、自分の判断で決める、というやり方が最適です。むしろ、そうでないと仕事が回りません。ただ、それも環境適応ですから、組織の規模が50人、80人、100人と大きくなってくると、求められる仕事の進め方が質的に変わってきます。具体的には意思決定やコミュニケーションのあり方などが変わってくるんですね。そうした変化の中で、従来のやり方をしていると、うまくいかないことが多くなってきます。こういう変化に直面している組織や人は、スポーツクラブに限らず、たくさん存在します。
アルバルクはほぼプロパーで人数を増やしてきました。私を含めてほとんどの方がどこかで別のキャリアを積んだ、いわゆる「中途入社組」です。
そこに、出向者や業務委託の方が加わってできているのが今の組織です。すると、当然みんなバックグラウンドが違いますから、「常識」も違います。場合によっては、その「常識」の違いによって摩擦が起きることもあります。だからこそ、約100人規模の組織を一つに束ねる「指針」と「基準」と「決まり」が必要になると感じていました。「指針」は、MVVですね。それが出来たから、次は「基準」と「決まり」を作ろう、と。
処遇の話に見えがちですが、本質はそこではありません。役職ごとに求められる役割や、昇格要件など、「どんな人材を期待しているのか」という人材像を共通言語にすること。そこが一番重要だと思っています。当然、組織としては着なれない服を着るようなもので、着方から覚えることから始めなければならないし、着ても窮屈だったり、節々が痛むかもしれません。でもそういう「成長痛」を一緒に乗り越えていきたいと思っているんですよね。これを考える中では、アデコさんにも、いろいろと相談に乗っていただきました。

アルバルクを「他でも通用する人材が育つ場所」へ
栗盛さまもう一つ、スポーツ業界は構造的に、業界外との人材の流動性が低いと感じています。他業界に比べると報酬水準は相対的に低いと言われている業界なので、採用はその点がボトルネックになりがちですし、スポーツ業界から他業界への転身は、経験で培った専門性を武器にしにくいので、更に少ないと感じます。
すると、同一業務の経験が積み上がっていく良さはある一方で、外部の知見が入ってきにくくなります。また、この業界でスキルを高めて、他業界へ出ていくキャリアパスも作りにくいと言えるでしょう。結果として、業界全体の成長も、人の成長も、抑圧されやすい構造になっているのではないか、というのが、私の感覚です。だからこそ、そうしたパスウェイは意識的につくっていきたいと思っていました。
森制度設計の議論の中でも、「ここで身につけたスキルが外でも通用し、外で磨かれて、また戻ってくる」という循環の話をしましたよね。栗盛さんが描いているのは、クラブに閉じない、プロフェッショナルとして外に開いたキャリアだと感じています。
栗盛さまもちろん「辞めてほしい」と言っているわけではありません(笑)。ただ、アルバルクで培った知見を持って、報酬やタイトルを上げて他クラブへ行く。あるいは経験を抽象化して、ベンチャーや別の業界へ挑戦する。そういうときに、「アルバルクでやってきたから、さすがだよね」と言われる存在でありたい。
よく「元リクルート」のネットワークのような話がありますが、アルバルクも「アルバルク出身なら、このレベルになるよね」と言われるブランドをつくれたら、結果的にクラブそのものの価値も上がっていくと思っています。

「アルバルクにいる意味」を考え、主体的になってもらう
森キャリア開発については、制度設計の中でも特にこだわられていた印象があります。改めて、そのポイントを教えていただけますか。
栗盛さま一番大事にしたのは、本人が主体的にキャリアを考えることです。日本型の組織では、「就職というより就社」という感覚が強く、異動や役割は提示されたものに従い、給与も決められたものを受け取る。そういう前提で働くスタイルが、まだ多いと思います。
ただ、この業種では、それでは立ち行かない。だからこそ、自分のキャリアを主体的に考え、その実現の場としてクラブを捉えてほしいと思いました。
ただし、これは「あなたの意思を叶えてあげますよ」という優しい話ではありません。主体的にキャリアを捉えた人のほうが、結果としていい仕事をする、という事実認識に基づいています。自分の人生をどう使うのか。その環境としてアルバルクを選んでいる、という意識を持った瞬間に、仕事は受け身ではなくなり、自立性が生まれる。そうなると、出てくるのは文句ではなく、提案になります。我々がMVVに掲げている「挑戦・変革・プロフェッショナリズム」といったものは、こうした主体性の上に生まれてくるものです。
実際、社内アンケートなどを見ても、働く環境について、「ここが足りない」「もっとこうしてほしい」といった声は一定数あります。それ自体は悪いことではありませんが、さらに主体性が立ち上がれば、「ここを選んでいるのは自分だ」という前提に立てる。そうすると、環境への不満は、環境を良くするための提案に変わっていくはずです。
浅野さままさに合わせ技だと思っています。会社としてどんな人材を育てたいのか。そして本人は、どんな成長を望んでいるのか。
アルバルクは、バスケットボールクラブであると同時に、アリーナという場も持っています。一体経営でビジネスを伸ばしていくには、「バスケットボール」、「プロスポーツ」、そして「場(べニュー)」の文脈を横断して考えられる人材が必要です。
中途採用が中心なので、最初は「自分は●●担当」と、職種に閉じた自己定義で入ってくる人もいます。でも、そこで終わってしまうなら、アルバルクである必然性は薄い。
だからこそ、「アルバルクにいる意味」を自分で考え、主体的になってもらう。その意志と、異動や配置のチャンスが結びついたとき、人も組織も、前に進みやすくなる。そこは、経営側としてとても重要なポイントだと考えています。

原理原則を定め、変化に対応できる制度に
森今回の制度は、いくつかユニークな点がありますね。言える範囲で結構なのですが、具体的にはどういう点にこだわったのでしょうか?
栗盛さまお話しできることで言うと、大きなポイントとして、具体的な制度の前提となる「組織・人材マネジメントポリシー」を新たに策定したことが挙げられます。司法に例えていえば、「組織・人材マネジメントポリシー」が「憲法」で、具体的な制度が「法律」のような位置づけです。ここには、アルバルク東京が組織や人材に向き合い、それらに対して働きかける中で大切にする原理原則を記載しています。例えば、あらゆる組織・人事施策がMVVを実現し、良き企業文化を醸成するために存在する、といった位置づけを明確にしています。また、その中で報酬や評価、採用、キャリア支援などについて、どのような考えのもとに行っていくかについて、重要な指針を言語化しています。
浅野さまBリーグが発足して10年で、日本のプロバスケットボールを取り巻く環境は大きく変わりました。また、それ以外を見渡しても、世の中の環境はあらゆる面において劇的に変化し続けており、かつ、その変化のスピードも加速しています。そういう前提認識に立つと、人事制度の「賞味期限」も当然短くなっていくと考えています。つまり、変化し続けることを前提とした制度設計をせざるを得ません。
しかし一方で、それらが場当たりなものであってはなりません。従って、立ち戻るべき原理原則をしっかりと言語化しておくことは、とても重要でした。

「それ、うちの管理職はできますか?」という社員の問い
森制度導入に向けて、面談や説明会も進んでいますが、現場の反応はいかがですか。
栗盛さま本格運用はこれからですが、説明会の段階でも、反応の違いははっきりしていました。面談される側、つまり一般社員の反応は、比較的フラットな受け止め方が多いですね。
森評価される側より、評価する側のほうが戸惑いが大きかった、という印象ですか。
栗盛さま今の時点では、そうですね。実際に、面談する側である管理職層からは、かなり意見をいただきました。今回の狙いは、本人にフィードバックをして、認識の乖離をお互いに共有することです。ただ、管理職側からすると、「自分が伝えた内容が、上位者の見方とは違っていたらどうするのか」という不安が出てくる。
森フィードバックする側の責任が、急に重くなる感覚ですね。
栗盛さまそうですね。気持ちはよくわかるんです。でも、そこも含めて、管理職の役割だと思っています。印象的だったのは、一般社員向けの研修で、こんな声が上がったことでした。「言っていることは分かりました。でも、それ、うちの管理職はできますか?」と。
森制度の是非というより、運用への問いですね。
栗盛さま本当にその通りで、制度は運用者がいてはじめて機能します。ただ、社員側にもはっきり伝えています。「みんなにとって初めてであるように、我々(=管理職)にとってもこれは初めてのチャレンジだ。だから、できるかできないかではなくて、やる。やらなければ、できるようにもならない。マネジメントというのは、難しい。うまくいかないこともあるかもしれない。あなたにとっては、それは不満かもしれない。でも、その現実を踏まえた上でどう振る舞うかは、あなたの問題だ。少なくともあなたのキャリアは、あなたのものなのだから。」と。
もちろん、意見は受け止めますし、管理職側にもきちんと伝えます。その上で、もし管理職としての成長が見られないなら、数年後にその役割から降りることもある。制度を変えるというのは、そういうことだと思っています。

制度には寿命がある、だから適応し続けなければならない
森今後、この制度をどのように育てていきたいと考えていますか。
栗盛さま先ほど浅野さんが話された通り、制度には寿命があると思っています。今回つくったものも、最終形ではありません。3年というと短く感じるかもしれませんが、5年くらいのスパンで見れば、必ずブラッシュアップが必要になる。これは思想のブレではなく、環境への適応です。外部環境も変わるし、組織の内部環境も変わる。だから、運用しながら見直し、更新していく前提でいるべきだと思っています。
ただ、どんなに制度を変えても、立ち戻る軸は、定めたポリシーであり、MVVです。挑戦し続ける人、プロフェッショナルとして会社との約束、社会との約束を果たす人が、きちんと認められる組織でありたい。その前提として、真摯であること、誠実であること。自分も仲間も大切にすること。そういう姿勢を持った人たちが、きちんと報われ、適切に処遇される。そのための制度であり続けたいと思っています。
浅野さま制度が合っていないと思ってから改訂を始めると遅い。だから、ローリングしながら良し悪しを判断する。2〜3年後の変更も視野に入れた上で、常に次を考えながら動いていく。
「一度つくったから、もう終わり」にはしません。制度は固定するものではなく、組織の変化に合わせて育て続けるものだと考えています。

「運用を想定して作る」ことが、アルバルク東京のリアリズムだった
冨山当初思い描いていた制度の方向性と、最終的に出来上がったものは、近いものでしたか。
栗盛さま方向性としては、概ねラインに乗っていると思います。もちろん、社内においても、各々がこれまで経験してきた人事制度や、思い描く「理想の制度」のイメージもさまざまなので、調整や合意形成のプロセスは必要でした。それでも最終的には、思想と現実のバランスが取れた、いい着地点に来ていると思っています。
浅野さま社員の顔が全員浮かぶ規模だからこそ、「運用したときに矛盾が出ないか」「信頼を失うことにならないか」そこは強く意識しました。
昔の上司に、言われた言葉があります。「お金の世界は、8割9割で傾向が見えればいい。でも人事は人ひとりの話だ。99人が良くても、1人が違ったら、その1人にきちんと向き合う必要がある」と。だからこそ、運用を想像しながら制度を作ることが何より大事だと思っています。
栗盛さま例えば、「ビジョンドリブンで作って、合わなければ辞めてもらってもいい」という、かなり強い設計にする、という選択肢も存在しました。でも、この会社の文化、親会社も含めた背景を見ると、アップ・オア・アウト(昇進か、さもなくば退職か)ではない。そこを無視した制度は、現実にはワークしません。
だからこそ、運用で破綻しないことを最優先に考えました。運用を詰めずに走ると、最初に壊れるのは管理職層です。それは絶対に避けたいことでした。
だから、思想だけでなく、「どう運用されるか」を丁寧に詰めることが不可欠でした。

アデコの価値は文脈理解をベースに伴走するスタイル
大前今回アデコが中に入って伴走したことについて、どのように映っていましたか。
栗盛さま冨山さんには長く関わっていただいていて、我々のこれまでの経緯や文脈、組織の中の人の関係性までよく理解してもらっていました。その分、話がとても早かったですね。
森さんは、専門知見のキャッチアップが非常に早かった。我々だけでは担保しきれない領域、例えば報酬体系の計算やレンジ調査、他社事例の整理など、「ここは外部の力が必要だ」というポイントをきちんと見極めて対応してくれた。そこは率直にありがたかったです。
今は、AIを使えば情報自体は簡単に取れる時代です。だからこれから本当に価値になるのは、「情報をたくさん持っていること」ではなく、「この組織、この文脈にフィットするものだけを選び、提供できること」だと思っています。
浅野さまいわゆる「俺たちはすごい」タイプのコンサルだと、こちらが本音を話しづらくなることがあります。その点、今回は、我々の課題をそのまま受け止めた上で、「これなら運用できそうだ」とイメージが湧く提案をしてもらえた。だから議論が前に進みました。
正直、非現実的な10個の案より、実際に運用に乗る2案のほうが価値がある。今回それができたのは、とても良かったと思っています。
大前営業として伴走しながら文脈を理解し、途中で難しい局面があっても軌道修正しながら価値を出していく。そこは大切にしている部分なので、そう言っていただけるのは素直に嬉しいです。

そしてアルバルク東京は、次の一歩へ
大前最後に伺います。今回のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)策定と制度改定を経て、これからに向けて伝えておきたいことはありますか。
栗盛さまMVVは作っただけでは意味がないと思っています。大事なのは浸透です。
浸透というと、朝礼で唱和する、といったイメージもあるかもしれません。でも、僕はそういう話ではないと思っています。方向性を示したなら、それに沿って行動した人がきちんと処遇される。意思決定も、その軸に基づいてなされる。そうした考え方が、制度やルールといったハードに落とし込まれている状態こそが、本当の意味での浸透だと思います。思想は、一つ一つの事実の積み重ねによって、人や組織に浸み込んでいくのです。
今回の人事制度は、そのために意識して作った部分が大きい。そこは、ぜひ伝えておきたいですね。
浅野さまALVARK Willの議論から始まり、MVVを検討し、社員インタビューも含めてプロセス全体に入っていただきました。その上で、「アルバルクが大事にしていることを制度に反映する」という一貫した考え方のもとで、アデコさんと進め、形にできた。これは大きな意味があったと思っています。
取締役会でも、「アルバルクを本当に理解してくれている会社に支援してもらうべきだ」という話になり、複数社の中からアデコさんを選びました。ここまで一緒に作れたこと自体が、次のチャレンジに向けた確かな土台になったと感じています。
森ありがとうございます。MVVを「言葉」で終わらせず、「制度」と「運用」で日常に接続する。その設計思想自体が、アルバルク東京のプロフェッショナルであることの表明だと感じました。これから運用のフェーズで、現場の挑戦がどう更新されていくのか、引き続き伴走させてください。
(前編はこちら)
【活用事例】 アルバルク東京の組織改革/前編 避けて通れなかった問い。社会におけるプロスポーツクラブの価値とは。
※本記事は2025年12月20日の取材を元に作成しました。
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(アデコ株式会社 コンサルティング事業本部)

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