特定技能

特定技能外国人材の定着率を高める具体策とは?離職率の現状や離職の要因を解説

2026/04/17

特定技能外国人材の定着率を高める具体策とは?離職率の現状や離職の要因を解説

特定技能で外国人労働者を雇用する際には手間やコストがかかります。定着しなければ人材不足が解消しないだけでなく、手間やコストも無駄になってしまうため、定着させるための対策は重要です。

本記事では、特定技能外国人の離職率や、離職してしまう主な理由を紹介します。離職理由を踏まえ、定着させるために重要な対策や取り組みを紹介するので、外国人労働者の定着に悩んでいる企業の方は参考にしてください。

特定技能外国人の定着が重視される理由

在留資格「特定技能」は、人手不足対策を目的とした制度です。「一時的な人手補充」ではなく、人手不足分野の労働力確保を目的としています。

特定技能は、一定の技能や日本語能力を有することを前提としており、即戦力人材の雇用が可能な制度です。

日本は少子高齢化や労働人口減少により、多くの産業分野で人手不足が深刻になっているため、特定技能をはじめとする外国人労働者の雇用を検討している企業の方もいるのではないでしょうか。

しかし、外国人材を採用するにあたっては、環境整備や法令遵守などを含め、採用コストがかかります。短期間で離職が続けば、制度本来の目的を達成できない上、企業側の負担が大きくなるため注意しましょう。

また、離職率が高いと助成金の対象にならない点にも注意が必要です。たとえば、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」では、就労環境整備計画期間終了後の6ヶ月経過後に、外国人労働者(雇用保険一般被保険者)の離職率が原則15%以下であることを支給要件に定めています

企業側は人手不足の根本的な解決や、国からの助成金を受けるために、特定技能で働く外国人労働者が定着するよう適切な環境整備やサポート体制を構築する必要があります。

※外国人労働者数が2人以上10人以下の事業所では、6ヶ月経過するまでの期間の外国人離職者が1人の場合は支給可

特定技能外国人の定着率

特定技能外国人の定着率は公表されていませんが、離職率は出入国在留管理庁の資料からみてとれます。特定技能制度が施行された2019年(平成31年)4月から、2022年(令和4年)11月まで、自己都合により離職した外国人労働者は1万9,899人です。

業種の分野別にみると以下のとおりです。

分野 離職者数 全体に対する離職者の割合
介護 2,219人 12.2%
ビルクリーニング 338人 15.7%
工業製品製造業 5,403人 15.7%
建設 2,157人 14.8%
造船・舶用工業 743人 14.0%
自動車整備 200人 10.0%
航空 18人 9.6%
宿泊 69人 30.4%
農業 4,374人 24.7%
漁業 312人 16.9%
飲食料品製造業 1万1,054人 23.7%
外食業 1,175人 19.1%
全分野 2万8,062人 19.2%

出典:林野庁 木材産業分野 特定技能外国人受入マニュアル

※集計の際に分野を特定できない者があるため、先述の総数とは一致しない。

なお、日本の新規学卒就職者(2022年3月卒業者)のうち、就職後3年以内の離職率は以下のとおりです。

分類 就職後3年以内の離職率
高卒就職者 37.9%(前年比-0.5ポイント)
大学卒就職者 33.8%(前年比-1.1ポイント)

出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」

データの収集方法が異なるため正確な比較はできませんが、離職率だけで単純比較すると、日本の新卒者の離職率に比べ、特定技能の離職率は低い傾向にあります。

しかし、宿泊業では日本の大学生の離職率に近い割合となっているため、雇用環境の整備や見直しが必要であることがうかがえます。また、自己都合退職であっても、2020~22年のコロナ禍での勤務先休業・業務量縮小などの影響も少なからずあると考えられるでしょう。

特定技能外国人が離職した後の状況

特定技能外国人が自己都合で離職した後の状況も調査により把握されています。なお、以下のグラフでは求職活動中・在留資格変更許可申請中などを「その他」にまとめて表示しています。

特定機能外国人が自己都合で離職した後の状況

出典:林野庁 木材産業分野 特定技能外国人受入マニュアル

※自己都合による離職後の在留状況をフォローアップしたものであり、届出後の対応により復職した者を除くなどしているため、先述の総数とは一致しない。

「その他」には求職活動中の方や、在留資格変更許可申請中の方なども含まれます。つまり、帰国の約3割を除き、約7割の外国人労働者は、転職や在留資格の変更、求職活動を続けていることになります。

特定技能と技能実習外国人の失踪状況

特定技能や技能実習では、離職ではなく行方不明となる外国人労働者もいます。出入国在留管理庁が公表している資料によると、外国人労働者の失踪状況は以下のとおりです。

2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
技能実習生 8,796人 5,885人 7,167人 9,006人 9,753人 6,510人
特定技能 0人 16人 76人 264人 348人
(データなし)

出典:出入国在留管理庁 技能実習制度の現状「資料No.2」
出典:出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数の推移」

技能実習制度では、毎年約6,000人以上の失踪が確認されています。2024年の技能実習生数に占める失踪者の割合は1.2%です。減少傾向にあるものの、2021年から2024年までの技能実習生の失踪者は計38,321人で、2025年5月時点で所在不明者は9,416人とされています。

特定技能の失踪者割合は、2023年時点で0.15%です。特定技能は在留資格で定められた範囲で条件を満たせば転職が可能なことや、能力に応じて日本人と同等の水準の給与が得られるなどの理由からか、技能実習に比べて失踪者数が少ない傾向にあります。

しかし、失踪者数自体は増加している点には注意が必要です。

特定技能外国人の定着率が低い時に考えられる理由

特定技能外国人の離職理由に関する公的なデータは公開されていません。しかし、外国人労働者を雇用した際に起こる一般的なトラブルの例から、以下が主な退職理由として考えられます。

  • 仕事内容のミスマッチや採用時の労働条件とのズレ
  • 日本の文化や職場でのコミュニケーションの難しさ
  • 生活環境や言語面での不満
  • 企業側のサポート不足

それぞれ詳しく紹介します。

なお、以下の記事でも外国人労働者を雇用する際の課題を詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

あわせて読みたい

外国人労働者問題の現状と課題を徹底解説!企業に求められる準備と対策とは?

仕事内容のミスマッチや採用時の労働条件とのズレ

特定技能外国人に対し、業務に関する事前説明と実際の仕事内容・労働条件が異なると、離職につながる可能性が高くなります。

特定技能は一定の技能・日本語能力を有する人材を前提とする制度です。しかし、現場では単純作業が多かったり、反対に業務内容が難しすぎたりするなど、契約時の説明と異なるケースがあります。

残業時間やシフト、休日の取り扱い、賃金水準に対する認識のズレも外国人労働者の不満の要因になるかもしれません。

特定技能は転職が可能な在留資格です。不満が解消されない場合、離職や転職につながります。

日本の文化や職場でのコミュニケーションの難しさ

日本特有の職場文化や人間関係への不適応も、定着を妨げる要因のひとつです。

報告・連絡・相談の徹底、厳しい時間管理、暗黙の了解を重視する(空気を読む)などは、外国人にとって慣れない、もしくは理解しがたいケースがあります。

年功序列や上下関係、注意や指導の伝え方によっては、不満につながり、離職の原因になることもあるでしょう。

外国人労働者や企業に問題があるというより、文化的背景の違いから生じるすれ違いです。「改善」ではなく、お互いがそれぞれの文化を理解・尊重し、認識を共有することが大切です。

生活環境や言語面での不満

仕事の業務に問題がなくても、生活環境や言語面での不満が定着を妨げる可能性があります。たとえば、住居探しや契約手続き、役所対応、医療機関の利用など、日本での生活は外国人にとってハードルが高い場面が少なくありません。

職場では業務がこなせても、日常会話や細かなニュアンスが理解できず、孤独感やストレスを感じるケースもあります。業務に関しては問題がないため、不満が募っていることが表面的には分かりづらいかもしれません。

不満が積み重なると、「働き続けたいが生活がつらい」という状況に陥り、結果的に離職や帰国を選択することになる可能性があります。

企業側のサポート不足

企業側の受け入れ体制やサポート不足も、定着しない大きな要因となるため注意しましょう。特定技能では、就労面だけでなく生活面を含めた支援が義務づけられています。

しかし、表面的にサポート体制を整えている形をとっているだけで、定期面談が十分に行われていない、相談できる窓口が機能していないなどには注意しましょう。

サポートが期待できない職場では不満が募るため、離職率が高くなります。

特定技能外国人を定着させるために企業側ができる対策や支援

特定技能外国人を定着させるための企業側による対策・支援は様々ありますが、前提として「義務的支援」や「任意的支援」を確認しておく必要があります。

まず、特定技能1号で外国人材を雇用する企業は、以下の「義務的支援」を行わなければいけません。

義務的支援 概要
事前ガイダンスの提供 雇用契約後、在留資格に係る申請前に労働条件・活動内容・入国後の生活等の説明を行う
出入国する際の送迎 出入国時の空港から住居・事業所の送迎などを実施する
住居確保・生活に必要な契約支援 住居の確保や銀行口座・携帯等契約支援を行う
生活オリエンテーション 日本での生活ルールや災害対応方法などの案内を行う
公的手続等への同行 住民票・保険・税等の公的手続きに同行する
日本語学習の機会の提供 日本語学習の機会や教材情報の提供を行う
相談・苦情への対応 相談・苦情に対して理解できる言語で対応する
日本人との交流促進 地域行事や自治会等への参加支援を促す
転職支援(人員整理等の場合) 人員整理など、受入機関側の都合により離職する場合に次職探しの支援を行う
定期的な面談・行政機関への通報 定期的面談を実施し問題があれば関係機関へ通報する

出典:法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」

加えて、外国人労働者が問題なく働けるよう「任意的支援」も行うことが望ましいとされています。なお、任意的支援は「1号特定技能外国人支援計画」に記載することで支援義務が生じます。

上記、義務的支援の内容を踏まえ、特定技能外国人を定着させるために企業側ができる以下の対策・支援を紹介するので参考にしてください。

  • 労働条件や業務内容を明確に提示する
  • 入社後のサポート体制を整備する
  • 悩みや苦情を相談できる窓口を用意する
  • 定期的に面談の機会を設ける
  • 評価制度やキャリアプランを明確にする
  • 登録支援機関に支援業務を委託する

労働条件や業務内容を明確に提示する

特定技能外国人の定着を図る際に最も基本となるのは、労働条件や業務内容を事前に明確に提示することです。

業務範囲、勤務時間、休日、残業の有無、賃金や昇給の考え方などを曖昧にしたまま採用すると、入社後の「聞いていた話と違う」という不満につながります。

特定技能は転職が認められているため、ミスマッチがあれば早期離職に直結してしまうでしょう。契約書や説明資料を用いて、母国語ややさしい日本語で丁寧に説明し、理解度を確認することが重要です。

入社後のサポート体制を整備する

特定技能外国人が定着するかどうかは、採用してからが重要です。入社直後は、仕事だけでなく生活面でも不安が大きい時期です。

業務の進め方や職場ルールを体系的に教えるほか、生活面の初期サポートを整えると良いでしょう。業務上のサポートや生活面のサポートの具体例は以下のとおりです。

  • 理解しやすい日本語で書かれた業務マニュアルを作成する
  • 先輩社員をサポート役として配置する
  • 定期的に面談を行い、仕事や生活面での困りごとを把握・サポートする
  • 日本語の教育機会を提供する
  • 住居や携帯の契約手続きに同行する
  • 病院をはじめとする公共機関の利用方法や災害時の対応等を説明する

一部は雇用側の義務的支援に定められています。事前に確認しておきましょう。

悩みや苦情を相談できる窓口を用意する

特定技能外国人が悩みや不満を抱えていても、上司や同僚に直接伝えられないケースも考えられます。言語や文化の違いから、問題が表面化しにくいこともあるかもしれません。

そのため、業務や人間関係、生活面について相談できる窓口を明確に設けましょう。社内窓口に加え、外部の相談先を案内することも有効です。

小さな問題でも気軽に相談でき、解決できる体制を整えていると、不満が解消されて離職やトラブルの防止につながります。

定期的に面談の機会を設ける

定期的な面談は、義務的支援のひとつです。外国人労働者が直接相談してこない場合でも、定期的に面談する機会を設けて不満や悩みごとを聞きましょう。

業務の進捗確認だけでなく、職場での困りごとや生活面の不安を聞き取ることで、早急に問題に対処できます。

形式的な面談ではなく、安心して話せる雰囲気づくりが重要です。任意的支援として、企業側に違反や問題があり、社内の人間に相談できない時のために、関係行政機関の相談窓口を一覧にして渡しておくことが望ましいとされています。

評価制度やキャリアプランを明確にする

評価制度やキャリアプランを明確に示すことは、特定技能外国人の就労意欲を高め、定着率を向上させる重要な要素です。

どのような基準で評価され、どのタイミングで昇給や業務範囲の拡大があるのかを具体的に示すことで、働いている外国人労働者は将来像を描きやすくなります。

明確な評価制度がなく、将来を見据えたキャリアプランが描けない場合、転職につながる可能性が高まるでしょう。

特定技能の場合、特定技能2号への移行がひとつのキャリアパスです。特定技能2号には在留期間の更新に上限がありません。家族の帯同も認められるため、外国人労働者の長期就労が期待できます。

特定技能2号の取得をサポートする体制を確立すると、定着率の向上が期待できるでしょう。

登録支援機関に支援業務を委託する

特定技能制度では、受入企業に対して生活・就労に関する支援が義務づけられています。しかし、全てを自社で対応するのは負担が大きい場合もあるでしょう。

人手が足りず、サポートが不十分になるなら、登録支援機関に支援業務を委託するのも選択肢のひとつです。

登録支援機関とは、特定技能外国人を受け入れる企業に代わり、支援業務を行う外部機関です。入社前の事前ガイダンス、入国時の送迎、住居確保や各種契約の補助など、義務的支援を全て委託できます。

登録支援機関になるためには、定められた要件を満たし、出入国在留管理庁長官の登録を受けなければなりません。はじめて特定技能外国人を受け入れる企業にとって、登録支援機関は実務面で心強いパートナーとなるでしょう。

外国人材が日本企業に求める条件とは?定着に向けた取り組み事例

外国人労働者に対する入国前のアンケートによると、外国人労働者が日本企業に入社する際に重要視する点は以下のとおりです。なお、このアンケートは厚生労働省がモデル都市を選定し、外国人労働者の定着に向けた取り組みを行うなかで実施されたものです。

外国人材が入社を決めるにあたって重要視したこと

出典:厚生労働省「地域外国人材受入れ・定着モデル事業実施報告書」

上記をみると、入社先の企業を選定する際には、給与や生活環境、勤務条件に重きが置かれていることがわかります。一方、入国後の定期面談で相談が多い内容は以下のとおりです。

入国後の定期面談で相談が多い内容

出典:厚生労働省「地域外国人材受入れ・定着モデル事業実施報告書」

入国し、働きはじめた段階では、生活や仕事に関して悩んでいる外国人労働者が多いことがわかります。

特定技能外国人を定着させるための取り組みでは、企業向けには異文化理解研修を実施し、日本人従業員が文化や価値観の違いを理解できるようにしたほか、定着計画の策定支援として就業マニュアルや受入準備チェックシートを提供し、職場体制整備を支援しました。

外国人材を受け入れる企業側は、内定後も内定者との定期的な面談を通じて事前情報と実際のギャップを解消し、日本語能力の維持・向上にもつなげています。入国後のフォローアップに加え、地域住民との交流イベントや異文化理解の機会を設け、地域とのつながりの促進にも取り組んでいます。

そして、上記を含めた様々な取り組みを行った結果、入社から6ヶ月後の定着率は99.2%と高い水準を記録し、退職者はわずか3名(帰国が理由)にとどまりました。

モデル地域ごとの定着率もほぼ100%であることから、既存従業員、外国人労働者、地域との交流など、多面的な支援が結果的に定着率の向上につながっていることがわかります。

なお、上記の取り組みは、国が行ったモデル事業における実施内容の一部を紹介したものです。企業の規模や場所などによって実施可能な取り組みの範囲は異なるため、あくまで特定技能外国人の定着を目指すためのひとつの参考としてください。

まとめ

特定技能外国人を定着させるためには、企業側が必要な受け入れ準備やサポート体制を確立させておくことが重要です。

しかし、はじめて外国人労働者を雇用する企業は、何からはじめれば良いかわからないかもしれません。人手不足の企業では、雇用環境の整備や支援体制の確立まで手が回らないケースもあるでしょう。

特定技能を含め、外国人労働者を雇用する際には、登録支援機関をはじめとする専門的なサポートを行ってくれる機関に頼ることも大切です。

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