【社労士監修】勤務間インターバル制度とは?義務化の動きと企業が知るべきポイントを解説
2026/01/16

長時間労働の是正や従業員の健康管理が企業に求められる中、提出が見送られた2026年の労働基準法改正案では勤務間インターバル制度の義務化が提言されるなど、勤務間インターバル制度への関心が高まっています。
今回のページでは、勤務間インターバル制度の定義を説明した上で導入を進める方法を解説します。同制度の導入により、企業に生産性向上の効果が発生する可能性もあるため、自社における設計と運用をイメージしながら読んでみてください。
目次
勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、1日の勤務が終了した後から翌日の仕事が始まるまでの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保するものです。終業時刻と始業時刻の間が過度に短くなることを防ぎ、従業員の生活時間や睡眠時間を確保するための制度となっています。
厚生労働省は勤務間インターバル制度を以下のように説明しています。
「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。
インターバルとして確保する時間
インターバルとして確保する時間について法的な定めはありませんが、厚生労働省の働き方改革推進支援助成金では、「事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が『9時間以上11時間未満』または『11時間以上』の勤務間インターバルを導入し、定着を図ること」が成果目標として設定されています。
また、人事院による通知「勤務間のインターバル確保について」には、「勤務間のインターバルの目安は、11 時間とする」という記載があります。
これらの公的な指針を踏まえて、インターバルの目安を11時間以上または9時間以上とする考え方が一般的です。ただし、いずれも法的な義務ではないため、業務内容や勤務形態を考慮し、自社の実情に合ったインターバルの設定が求められます。
出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」
出典:人事院「勤務間のインターバル確保について」
勤務間インターバル制度を導入した場合の働き方
インターバルとして11時間を設定すると次の図のように働き方が変わります。

始業時刻が8時の場合、前日の勤務が21時までに終了すれば11時間を確保できます。しかし、残業が発生して22時の終業となった場合は、翌日の始業時刻を9時に遅らせなければなりません。
また勤務間インターバル制度は民間企業だけのものではなく、健康維持の観点から公務員についても取り組みが推進されています。
勤務間インターバル制度導入は努力義務
勤務間インターバル制度は、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正により、2019年4月1日より、事業主の努力義務として位置づけられました。同法第2条第1項には、次の定めがあります。
現時点では罰則のない努力義務にとどまっていますが、提出が見送られた2026年の労働基準法改正案では導入義務化が議論されていました。今後も状況によっては導入義務化が進む可能性があります。
事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
勤務間インターバル制度導入の効果
厚生労働省の「勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル」には、導入の効果として次の3つが挙げられています。
<勤務間インターバル制度導入の効果>
- 従業員の健康の維持・向上
- 従業員の確保・定着
- 生産性の向上
それぞれの効果を詳しく解説します。
従業員の健康の維持・向上
IT系の労働者1,811名を対象にインターバルと健康の関係を調査した論文によると(※5)、インターバルとして確保される時間が短くなるほど労働者のストレス反応が増加し、起床時の疲労感が高まるとされています。
また、看護師1,538名を対象にした調査では、インターバルとして確保される時間が11時間未満の場合に翌月の病欠日数が増加することが明らかになりました。一方、夜勤そのものは病欠日数に影響を与えませんでした。
これらの調査結果から、終業時刻と始業時刻の間に十分な休息時間を確保することで疲労やストレスの蓄積を防ぎ、従業員の心身の健康を維持および向上させられると考えられています。
従業員の確保・定着
勤務間インターバル制度を導入すると、従業員はプライベートの時間を充実させたり、十分な休息を取ったりできるようになります。これは従業員のワーク・ライフ・バランスの実現につながるでしょう。
中小企業庁の「2024年版 中小企業白書」によると、最も優先度が高い経営課題として「人材の確保」を挙げた中業企業の割合は46.6%にのぼります。生産年齢人口の減少により人材確保が難しくなる中、勤務間インターバル制度を導入している企業は、無理のない働き方を提供できる職場として求職者から評価されやすくなります。
また、十分な休息を前提とした働き方は従業員の健康維持にもつながるため、入社後の離職を防ぎ、人材の定着を図る上でも有効な施策です。
生産性の向上
勤務間インターバル制度の導入により、従業員は仕事の時間とプライベートの時間を明確に切り分けられるようになります。その結果、勤務時間中の集中力が高まり、無駄な残業や非効率的な作業を減らす効果が期待できるでしょう。
このような働き方は、限られた時間で成果を出す組織づくりを後押しし、全体の生成性向上につながります。
勤務間インターバル制度導入から運用の4つのフェーズ
勤務間インターバル制度を効果的に運用するためには、制度を設計して導入するだけでなく、PDCAサイクルを回していくことが重要です。
ここでは制度の導入から運用を4つのフェーズに分けて解説します。
フェーズ1.制度導入を検討する
勤務間インターバル制度導入の際、はじめに着手するのは従業員の拘束時間の洗い出しです。労働時間のみならず通勤時間も把握し、インターバルが十分に確保されているかどうかを確認します。
就業規則やタイムカードを機械的に確認するのではなく、実態を丁寧に知ることが重要です。サービス残業が発生している場合はパソコンのログを確認したり、管理者が実際に目で見た事実をヒアリングしたりして実態の把握に務めましょう。
その上で勤務間インターバル制度の導入が経営上どのような意義を持つかを検討します。前述したように、従業員の健康の維持・向上、従業員の確保・定着および生産性の向上の効果が期待できるため、経営課題を解決する手段となるかどうかを確保するのです。
経営課題を推進する手段として制度を捉えられると、経営層のコミットメントが強化され、組織全体での導入と運用が適切なものとなるでしょう。
フェーズ2.制度設計
導入について検討した後は、制度の具体的な設計を行います。厚生労働省のマニュアルでは、次の7つの検討項目で設計を進めるように示されています。
| 検討項目 | 概要 |
|---|---|
| 適用対象の設定 | 制度の適用対象となる従業員の範囲を検討します。 |
| インターバル時間数の設定 | インターバル時間数(勤務終了時刻から次の勤務開始時刻までの間で、制度上確保すべき休息時間)を検討します。 |
| インターバル時間を確保することによって、翌日の所定勤務開始時刻を超えてしまう場合の取り扱いの設定 | 定められたインターバル時間を確保することによって、翌日の所定勤務開始時刻を超えてしまう場合の対応方法を検討します。 |
| インターバル時間を確保できないことが認められるケースの設定 | 定められたインターバル時間を確保しないこと/確保できないことが認められるケースの有無とその内容を検討します。 |
| インターバル時間の確保に関する手続きの検討 | インターバル時間の確保に関する申請手続き等の有無とその方法を検討します。 |
| インターバル時間を確保できなかった場合の対応方法の検討 | 定められたインターバル時間を確保できなかった場合の取り決め(対応・措置)の有無とその内容を検討します。 |
| 労働時間管理方法の見直し | インターバル時間の確保状況を適切に把握できるよう、制度導入を機に労働時間管理方法の見直しを行います。 |
参考:厚生労働省「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル」
注意すべきは、従業員の通勤時間がインターバルに含まれる点です。そのため、インターバルの具体的な時間を検討する際は、通勤時間を踏まえて十分な休息を確保できるかどうかという観点からの検討が求められます。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査の概況」によると(※8)、制度を導入している企業におけるインターバルの平均時間は10時間20分でした。これらの情報を参考にしつつ制度を設計した後は、根拠規程を整備します。企業内で勤務間インターバル制度を確実に運用するためには、制度の明文化が求められるでしょう。
フェーズ3.制度を導入・運用する
勤務間インターバル制度の設計が完了した後は、社内への周知を実施しましょう。その際は制度の内容と導入の背景、具体的な手続きについて伝える必要があります。
イントラネットや社内報に情報を掲載したり、対面もしくはオンラインでの説明会を実施したりして、周知を進めます。また社長をはじめとする経営層からのメッセージなどを発信するのも効果的です。
また、並行して顧客や取引先に制度導入について説明しましょう。顧客からの短納期発注や突発的な依頼があると、インターバルの確保が難しくなるためです。その際は現場の従業員に説明させるのではなく、経営層や管理職から伝える必要があります。
これらの周知および説明を繰り返しつつ、インターバルを確保できるように管理職が部下の勤務実態を正確に把握し、業務計画や業務量を調整します。また従業員も制度の効果を把握した上で休み方に対する意識を高めていく必要があるでしょう。
フェーズ4.制度内容・運用方法を見直す
勤務間インターバル制度を適切に運用するためには、効果検証と定期的な見直しが必要です。導入後はアンケート調査やヒアリング調査を用いて、インターバルが確保されているかどうかを確認しましょう。また、制度導入の効果が表れているかどうかも重要です。
その上で、インターバルを確保できていない従業員がいたり、制度導入が期待した効果につながっていなかったりする場合は制度内容と運用方法を見直し、自社に合った運用が実現されるまでPDCAを回す必要があります。
勤務間インターバル制度導入の3つの注意点
勤務間インターバル制度を自社に合った形で導入し、運用していくためには3つのポイントに注意しなければなりません。
無理のあるインターバル時間を設定しない
インターバルとして確保する時間は、自社の実態に合ったものにする必要があります。インターバルが短すぎると制度導入の意味が薄れ、長すぎると事業の継続が難しくなるためです。
厚生労働省の「勤務間インターバル制度に関する実態調査」によると、インターバル時間数と、それを設定している企業の割合は次の通りでした。
| 設定している勤務間インターバル時間数 | |
|---|---|
| 12時間以上 | 9.1% |
| 11時間~12時間未満 | 35.8% |
| 10時間~11時間 | 17.6% |
| 9時間~10時間 | 24.8% |
| 8時間~9時間 | 5.0% |
| 8時間未満 | 2.0% |
実態として、11時間から12時間未満をインターバルとして確保している企業が多いようです。ただし、確保できる時間は各企業の業種や組織体制により異なるため、自社の事業継続と従業員のメリットをふまえて検討することが大切です。
経営層や管理職が率先してインターバル時間を確保
勤務間インターバル制度を根付かせるためには、経営層や管理職によるコミットメントが求められます。そもそも経営層が制度に反する指示を出す状況であれば、現場の従業員はインターバルを確保できません。
そのため制度導入に当たっては経営層や管理職向けの説明会も実施し、上層から意識を変える必要があります。その上で経営層や管理職が率先してインターバルを確保し、従業員に同様の動きを広げていくと組織全体に変化が生まれるでしょう。
適用除外のルールを定める
勤務間インターバル制度を運用するためには、適用除外のルールを定めることが重要です。事業を継続していく以上、タイムゾーンの異なる国にある企業との打ち合わせが発生したり、繁忙期に急遽の対応が必要になったりするためです。
これらの例外的なケースを想定して適用除外のルールを定めておくと、制度を無理なく運用できます。一方、適用除外の範囲が過剰に広くなると、制度がそもそもの意味を失ってしまいます。そのため、自社の事業の実態を把握した上で労使間において丁寧に議論し、最低限の範囲で適用除外を定めると良いでしょう。
前述した厚生労働省の実態調査によると、適用除外の対象となる従業員がいる企業の割合は次の通りです。
| 制度の適用対象・適用除外の従業員 | |
|---|---|
| 100%(適用を除外している労働者はいない) | 71.1% |
| 80%以上~100%未満 | 15.7% |
| 60%以上~80%未満 | 5.7% |
| 40%以上~60%未満 | 3.6% |
| 20%以上~40%未満 | 0.5% |
| 20%未満 | 3.4% |
全体で28.9%の企業は適用除外のルールを定めているとわかります。フレックス制で働く従業員も適用除外のルールに関係するため、自社の実態に合わせて決定しましょう。
勤務間インターバル制度は人材確保と定着にも効果のある制度です
このページでは、勤務間インターバル制度の定義や義務化の見通し、効果について解説しました。同制度は、従業員の健康を維持および向上させられるだけでなく、従業員の確保と定着、生産性の向上という点で企業にもメリットのあるものです。
提出が見送られた2026年の労働基準法改正案では、勤務間インターバル制度の導入が義務化が提言されていました。今後も状況によっては導入義務化が提言される可能性はあるため、自社において制度を導入できるかどうかを早い段階から検討しておいてもよいでしょう。その際は、従業員の労働実態を正確に把握した上で、自社に合った制度設計を心がけましょう。
従業員が安心して働ける環境の整備は企業の競争力を高め、持続的な成長につながります。自社の将来を見据え、勤務間インターバル制度の導入を一度検討してみてはいかがでしょうか。
監修:涌井 好文 涌井社会保険労務士事務所
平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。
また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。


