このページでわかること
オンボーディングの基本
オンボーディングは、新しく入社した人材が早く職場に馴染み、力を発揮できるよう支援する取り組みです。入社手続きだけでなく、定着や早期活躍までを見据えた考え方です。
取り組むメリット
早期離職の防止、立ち上がりの早期化、組織への適応促進につながります。採用した人材が能力を発揮しやすくなるため、採用投資の効果も高めやすくなります。
効果的に進めるポイント
配属前後のフォロー、職場との接点づくり、業務理解の支援、相談しやすい環境づくりが重要です。入社後を現場任せにしない設計が定着率を左右します。組織・人事課題でお悩みならぜひAdecco(アデコ)にご相談ください。
近年、新規採用者の早期離職が社会問題となるなか採用と同様、定着に力を入れる企業が増えています。その方法のひとつとして注目されているのが「オンボーディング」です。
この記事では、オンボーディングの概要や注目される背景、企業の取り組み事例などを解説します。効果的に実施するコツなどもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
オンボーディングとは、新入社員の早期定着・活躍を促す取り組みのこと
オンボーディング(onboarding)とは、新卒・中途を問わず、新たに採用した人材がスムーズに組織になじみ、早期に成果を出せるようにするための取り組みです。航空機や船への搭乗を表す「on board」に由来する言葉で、新しい従業員ができるだけ早く現場に慣れるようサポートするという意味合いから、人事用語としても使われるようになりました。
取り組みの対象は、新卒・中途を含む新規採用者全員です。具体的には入社時に手渡す資料の整備やOJT、1on1ミーティング、継続的なサーベイなど、さまざまな施策が含まれます。単なる入社手続きや研修にとどまらず、定着・早期活躍までを見据えた包括的な考え方です。
オンボーディングが注目される背景
- 人材の早期離職による企業負担の増加
- オンボーディングは人材確保に重要な取り組み
人材の早期離職による企業負担の増加
オンボーディングが近年注目を集めている背景は、若手人材の早期退職に伴う採用コストの増加やROI(投資回収率)の悪化です。早期退職が続くことで育成・採用にかけたコストがムダになるだけでなく、新たな採用コストが発生する悪循環に陥ります。
またアデコグループが新卒入社3年以内の離職理由を調査した結果、トップは「自身の希望と業務内容のミスマッチ」(37.9%)、次いで「待遇や福利厚生に対する不満」(33.0%)、「キャリア形成が望めないため」(31.5%)でした。若手社員の多くが自身の希望する職種でキャリア形成を重視しているにもかかわらず、継続的に働くビジョンを描けないことが離職の要因と考えられます。
さらにリモートワークの普及によりコミュニケーション機会が減少し、エンゲージメントが高まりにくい環境も課題となっています。オンボーディングはこれらの課題を解決するための手段として、今後ますます重要性が高まるでしょう。
出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」
参考:アデコグループ「新卒入社3年以内離職の理由に関する調査」
オンボーディングは人材確保に重要な取り組み
厚生労働省の「人材の確保・定着に成功した企業の取組事例集~採用活動のコツ~」では、オンボーディングに積極的に取り組んでいる企業ほど、採用活動と採用された労働者の双方で、パフォーマンスが高い傾向が確認されています。
人材確保の効果を高めるためには、採用をゴールと考えず、研修や面談、相談体制の整備、人間関係の構築まで一貫して支援することが大切です。オンボーディングの仕組みを整えることは、採用した人材の定着や早期戦力化だけでなく、企業の継続的な人材確保にもつながります。
オンボーディングとOJT、OFF-JTの違い
OJTとは「On The Job Training」の略で、実務を通して仕事を教える人材育成の手法を指します。オンボーディングとOJTは混同されがちですが、オンボーディングの取り組み範囲は広く、座学を中心としたOFF-JTや1on1ミーティング、ランチや歓迎会なども含まれます。
OJTは現場で実際の業務を行いながら進めるため、効率的に育成ができる反面、トレーナーの力量に左右されることもあります。即戦力が前提の中途採用では、新しく入った社員が半ば放置されてしまい、実質的に機能しないなどのデメリットが生じることもあるでしょう。
オンボーディングの目的
新卒・中途を問わず、企業は新入社員に「早く戦力になってほしい」「長く勤務してほしい」と期待します。しかし実際には、部署や担当トレーナーによって育成の質にばらつきが生じやすいという課題もあります。オンボーディングはこれらを解決するための取り組みです。
ここでは3つの観点からオンボーディングの目的を解説します。
<オンボーディングの主な目的>
- 新入社員の早期戦力化
- 新入社員の早期離職の抑制
- 部署間格差の解消
新入社員の早期戦力化
オンボーディングは、新入社員が早期に成果を出せるよう、目標設定から日常的なサポートまでを組織全体で支える取り組みです。一般的に新入社員が戦力となるには半年~1年程度かかるといわれています。しかし組織になじめないなどの理由でそれ以上かかる場合も少なくありません。
早期戦力化には、小さくてもよいので成果を出させて手応えを感じさせることが近道です。そのための適切な目標設定と組織ぐるみの取り組みで効果を発揮するのがオンボーディングです。
新入社員の早期離職の抑制
早期離職には、仕事内容のミスマッチ、待遇への不満、キャリアの見通しを持てないこと、人間関係やコミュニケーション上の問題など、複数の要因が関係します。オンボーディングが機能すれば、社員が力を発揮しやすい環境が生まれ、成果が出しやすくなるでしょう。
成果に対して納得感のある評価がなされることで社員は成長を実感し、キャリア形成のイメージを持ちやすくなるでしょう。オンボーディングをきちんと実施することで、想定外の早期離職をある程度抑制できます。
部署間格差の解消
同じ時期に入社した社員であっても、配属先の部署や担当トレーナーによってオンボーディングの質に大きな差が生じやすいのが現状です。これが「部署間格差」と呼ばれる問題です。
体系化されたオンボーディングプログラムを全社で統一して実施することで、誰が担当しても一定水準を保つことができます。個人の熱意に依存した属人的な育成から脱却し、仕組みとして機能させることが格差解消の第一歩です。
オンボーディングのメリットや期待できる効果
オンボーディングが機能することで、従業員本人だけではなく、組織や企業全体へのメリットや効果が期待できます。ここでは、オンボーディングのメリットを紹介します。
<オンボーディングのメリットや期待できる効果>
- チームのパフォーマンス向上
- 従業員エンゲージメントの向上
- 採用コストの抑制
チームのパフォーマンス向上
オンボーディングは新入社員をスムーズにチームに溶け込ませ、パフォーマンスを高める効果が期待できます。新入社員はチームの役割やチームメンバーのことをいち早く理解し、円滑に業務を進められるでしょう。
チームメンバーはオンボーディングの取り組みを通して、チームのミッションやビジョンを再確認できます。結果的にチームの結束力が強まり、生産性などのパフォーマンスも向上しやすくなります。
従業員エンゲージメントの向上
オンボーディングによって新入社員の早期戦力化を実現できれば、エンゲージメントの向上も期待できます。成果がきちんと評価されることで、従業員はより「働きがい」を感じられるからです。
オンボーディングの施策として1on1ミーティングや定期的なランチなどを行い対話の機会が増えれば、従業員が抱える課題や悩みを素早くキャッチアップし、人事施策などの手も打ちやすくなるでしょう。
またオンボーディングの施策のひとつとしてツールなどを用いてサーベイを実施し、従業員のコンディションを可視化する方法もあります。
従業員エンゲージメントの向上について詳しくは下記のページでも解説しています。気になる方はこちらも併せてご確認ください。
従業員エンゲージメントを高めるために、人事ができる施策とは? 効果を測定する方法も解説>
採用コストの抑制
オンボーディングにより早期離職が抑制されることで、採用コストも抑えられ、投資対効果の改善も期待できます。人材の採用や育成には費用だけでなく、労力や時間など目に見えないコストも多くかかります。せっかく育てた人材が成果を十分あげる前に退職すると、新たに補充人材の採用コストが発生するなど投資対効果の悪化を招く可能性があるでしょう。
そのため、オンボーディングによって、入社後の認識のずれや職場への適応上の課題を早期に把握し、定着・活躍を支援することが重要です。
※リファラル採用=リファラル(referral)とは「推薦・紹介する」という意味です。リファラル採用とは社員に人材を紹介してもらう採用方法で、企業をよく理解した社員の紹介であるため、より企業に適した人材を募集できる可能性があります。
オンボーディングを効果的に実施するコツ
オンボーディングをより効率的・効果的に実施するためのコツをまとめました。自社の状況に合わせて取り入れてみてください。
【オンボーディングを効果的に実施するコツ】
- 入社前の受け入れ準備を徹底する
- 入社後の目標やビジョンをしっかりと共有する
- トレーナーだけに任せるのではなく、チームで取り組む
- ツールなども活用し、効率化を図る
- トレーナーを育成する仕組みを作る
- スモールステップ法で挫折を防ぐ
- オンボーディング4つのCを意識する
入社前の受け入れ準備を徹底する
新入社員が滞りなく業務を開始できるよう、入社日に伝える情報や渡す資料を整備しておきましょう。パソコンやプリンタの設定、経費精算や各種業務で利用するツールなど、業務以外でも入社後に覚えることは多いものです。特にリモートワークを実施している企業では、コミュニケーション不足に備えて、より入念な準備が欠かせません。
また入社日までにやるべきことを整理し、人事側で渡す資料、現場で用意する資料などをそろえておくのはもちろん、時間があれば入社前に新入社員とチームメンバーとの面談を設定するのも効果的です。
入社後の目標やビジョンをしっかりと共有する
オンボーディングでは目標設定やビジョンの共有が大切です。目標設定の際には新入社員にどうなってほしいかという組織からの「期待値」と、新入社員自身がどうなりたいのかという「希望やビジョン」をしっかりとすり合わせて、その延長線上に目標を設定する必要があります。
目標を設定し共有することで共通言語がうまれ、自然とコミュニケーションも活性化します。
トレーナーだけに任せるのではなく、チームで取り組む
オンボーディングは、特定のトレーナーだけに任せるのではなくチームで取り組みましょう。特定のトレーナーに任せることで、負担の増加で継続的な取り組みが難しくなると同時に、ムラが生じる可能性もあります。新入社員の状況をチームで共有して取り組むことでトレーナーの負担も減り、チームワークの向上も期待できます。
ツールなども活用し、効率化を図る
最近ではHRTech領域※でさまざまなサービスが提供されています。ITツールなどを活用することでオンボーディングの取り組みも効率化できるでしょう。
タレントマネジメントツールやエンゲージメントサーベイツールなどはその一例で、オンボーディングに特化したツールもあります。ツールで効率化できれば、コミュニケーションにも時間を割けるようになるでしょう。
※HRTech=人材(Human Resources:HR)+技術(Technology)を組み合わせた造語で「人事にITを活かす」という考え方です。
トレーナーを育成する仕組みを作る
オンボーディングの質は、担当するトレーナーの個人的な力量に大きく左右されやすいのが実情です。トレーナーによって新入社員への関わり方に差が出てしまうと、「部署間格差」の問題にもつながります。
トレーナー自身にも育成研修を設け、「教え方・関わり方」のスキルを組織として標準化することが重要です。またトレーナーを孤立させないよう、複数名でサポートする体制を整えるか、トレーナー同士が悩みを共有できるコミュニティを設けることも有効です。
スモールステップ法で挫折を防ぐ
新入社員が早期離職する背景には、「何もわからない状態での過大な業務量」や「最初の成功体験がない」という挫折感があります。スモールステップ法とは、習得すべきスキルや業務を細かく段階に分け、小さな成功体験を積み重ねることで自分にもできるという確信を高める手法です。
具体的には「最初の1週間は電話対応のみ」「2週目から書類作成を追加」というように、業務の難易度と量を段階的に増やしていきます。各ステップに明確な達成基準を設け、達成したら承認・フィードバックを行うサイクルが、早期離職の防止に効果的です。
オンボーディング4つのCを意識する
オンボーディングを効果的に進めるには、「Compliance(規則・制度)」「Clarification(役割の明確化)」「Culture(組織文化)」「Connection(人間関係)」という4つのCを意識することが重要です。
業務知識や社内ルールを説明するだけでは、新入社員が組織に十分適応できるとは限りません。担当する仕事への理解を深めるとともに、組織文化や人間関係の構築まで含めて支援することが、早期の戦力化や定着につながります。
4つの要素に偏りがないかを確認しながら、入社前の情報提供、入社時研修、OJT、上司との1on1、メンター制度などの施策を組み合わせましょう。
他社はどんなことに取り組んでいる?中途採用者に対して企業が実施している具体的なオンボーディングの取り組み
出典:厚生労働省「人材の確保・定着に成功した企業の取組事例集 ~採用活動のコツ~」
厚生労働省が中途採用に関して実施した企業アンケートでは、採用者の定着・戦力化に向けたオンボーディング施策として、「上司との面談」や「導入研修」などが挙げられています。
オンボーディングで採用した人材の定着・活躍を実現しましょう
新しく入ったメンバーが、早期に職場になじみ、能力を発揮できるようになるまでが「採用」という考え方も広がりつつあります。企業の文化・風土や仕組み、置かれている状況などは千差万別。それぞれの企業に合ったオンボーディングの設計や実施が、人事にとって今後ますます重要になってくるといえるでしょう。
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