このページでわかること
派遣契約で禁止されている業務・業種
港湾運送や建設業務、医療行為など一部業務では人材派遣が法律で禁止されています。
派遣が原則禁止される業務でも例外がある
紹介予定派遣や産休・育休代替など、条件付きで派遣可能となるケースもあります。
派遣契約を進めるうえでの注意点
禁止業務に従事させてしまえば、企業にもリスクが及びます。契約前の確認が不可欠です。 派遣社員が34,000名以上在籍するAdeccoではこうしたリスクの心配のない人材派遣をサポートしています。
2025/01/06

人材派遣は、企業にとって有効な人材活用と働き方の多様化のニーズに応えるものとして活用されています。ただし、どんな業務でも派遣が認められているわけではありません。この記事では、労働者派遣が禁止されている業務について解説していきます。
さらに、業務以外の禁止されている事項についても合わせて紹介するので、人材派遣を活用する前にぜひご覧ください。
派遣契約で禁止されている業務・業種
港湾運送や建設業務、医療行為など一部業務では人材派遣が法律で禁止されています。
派遣が原則禁止される業務でも例外がある
紹介予定派遣や産休・育休代替など、条件付きで派遣可能となるケースもあります。
派遣契約を進めるうえでの注意点
禁止業務に従事させてしまえば、企業にもリスクが及びます。契約前の確認が不可欠です。 派遣社員が34,000名以上在籍するAdeccoではこうしたリスクの心配のない人材派遣をサポートしています。
目次
労働者派遣法は、1986年(昭和61年)に施行された比較的新しい法律です。それまでも「業務請負」という形で派遣に似た形態のサービスを行っていた企業がありましたが、その評価が高かったこともあって、派遣労働を法律として明記し、適切な管理を行うことで労働者の保護につなげようという考えから成立しました。
当初は専門的な13の業務に限定して派遣を認めるというものでしたが、その後の法改正で16業務、26業務と対象業務は拡大していきます。1999年(平成11年)の改正では、それまで派遣可能な業務を限定していたのが原則自由化となり、逆に派遣を禁止する業務を指定する形に変わりました。
労働者派遣が禁止されている業務がある主な理由は以下です。
派遣を認めると雇用が安定しなくなる業務や、業務の性質上、直接雇用すべき仕事では、労働者派遣は適していません。既存の法律や制度によって守られており、労働者派遣の活用を禁止しています。
派遣禁止業務(適用除外業務)として、以下の5つが指定されています。
それぞれの業務について、禁止の理由を解説します。
港湾運送業務とは、埠頭における貨物の輸送・保管・荷役・荷さばきなど、積卸しを主体とする業務です。港湾運送業務には、波動性といって需要のピークとオフピークの差が激しく、また循環的に発生する特徴があり、その特殊性から、港湾労働法において港湾労働の実態を踏まえた特別な労働力需給調整制度として「港湾労働者派遣制度」が導入されています。
この制度は1986年の労働者派遣法成立の前からすでに運用されており、新たな労働力需給調整システムの導入は必要がないことから、派遣禁止業務となりました。
具体的には、派遣法の元では以下の業務に労働者を派遣できません。
建設業務とは、建築土木現場における作業のことで、その準備も含みます。建設業務は重層的な下請け関係で行われることが多く、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」の中で、労働者を雇用する者と指揮命令する者が一致する請負という形態になるよう措置が講じられています。
また、建設業務の特殊性を考慮して建設業務有料紹介事業や建設業務労働者就業機会確保事業についても定められています。港湾運送業務と同様に、労働者派遣事業という新たな労働力需給調整システムは不要なことから、派遣禁止業務とされています。
具体的には、派遣法の下では以下のような業務には労働者を派遣することはできません。
警備業務とは、事務所・住宅・興行場・駐車場・遊園地などの施設における事故の発生を警戒し、防止する業務のことです。他にも、運搬中の現金や貴金属などの盗難に関する警戒・防止や、人や車両が多く集まる場所での負傷といった事故発生の警戒・防止、あるいは人への危害の発生を警戒・防止する、いわゆるボディーガードの業務も含まれます。
先にも触れたとおり、警備業法上では請負形態で業務を処理することが求められています。労働者派遣を認めてしまうと、業務が適正に行われなくなる恐れがあるため、派遣禁止業務とされています。
労働者派遣が禁止されている医療関連業務は、以下の業務があります。
病院・診療所のほかに、介護医療院への派遣も原則禁止されています。ただし、助産所・介護老人保健施設などでは、薬剤師など一部の業務は派遣可能です。
医療業務は、医師・歯科医師を中心に専門職が一つのチームを形成して行っています。適正な医療を提供するためには、チームの十分な意思疎通が不可欠なことから、派遣元が人員を決定する労働者派遣では支障を生じかねないため、派遣禁止業務とされています。
労働者派遣が禁止されている士業は、以下の通りです。
これらの業務は、資格者個人がそれぞれ業務の委託を受けて行うことから、指揮命令を受けることがありません。そのことから、労働者派遣の対象からは除外されています。その他にも建築士事務所の管理建築士の業務は、建築士法において専任でなければならないとされていることから、労働者派遣の対象になりません。
この他にも、人事労務管理関係のうち、派遣先での団体交渉や労働基準法に規定する協定締結にて、使用者側の直接当事者として行う業務についても、業種に限らず労働者派遣が禁止されています。
人材や労務に関するお問い合わせはこちらここまで労働者派遣が禁止されている業務を見てきましたが、一部例外もあります。例えば、建設業務の施工管理や、湾岸地域であっても事務であれば派遣が可能となります。
医療関係業務に関しては、次の①~③に該当する場合は労働者派遣を行うことが認められています。
また、士業において以下の業務では、一部に限って労働者派遣が可能です。
労働者派遣法には、重い順に次の4段階の罰則があります。
今回解説している、派遣禁止業務について労働者派遣を行った場合に適用されるのは、2の罰則です。届出を怠り、虚偽の陳述や報告をした場合などは3、4の罰則の対象になります。
なお、派遣先が労働者を派遣禁止業務に従事させている場合でも、派遣元企業が労働者派遣の停止命令を受けることになります。もちろん派遣先にも、派遣就業を是正するために必要な措置や、派遣就業がおこなわれることを防止するために必要な措置を取るよう勧告がなされ、従わない場合には企業名が公開されます。
また、派遣先が以下の違法派遣を受け入れた場合は、その時点で派遣先が派遣元と同じ条件で派遣労働者に労働契約の申し込みをしたものとみなされます。この申し込みに派遣労働者が承諾すると、派遣先はこの労働者を直接雇用することになります。
労働者派遣法では、業務の縛り以外にも5つの禁止事項を設けています。
それぞれ、具体的に禁止されている内容を解説していきます。
二重派遣とは、派遣会社から受け入れた派遣労働者をさらに別の企業に派遣し、その企業の指示のもとで働かせることです。
二重派遣では、派遣労働者の雇用責任が不明確になるリスクがあります。さらに、賃金の支払い元もあいまいになり、仲介手数料も二重に取られるため、不当な条件になることから禁止されています。
雇用期間30日以内の日雇派遣は、原則禁止です。ただし、例外として以下の業務は日雇い派遣の活用が認められています。
また、日雇い労働者が以下に当てはまる場合も例外として、30日以下の労働者派遣が認められています。
直接雇用していた労働者は、離職1年以内に元の勤務先に派遣できません。直接雇用から派遣労働者に置き換えて、労働条件が切り下げられるのを避けるためです。
ただし、60歳以上の定年退職者は、例外として離職後1年以内の受け入れも認められています。
派遣労働者を受け入れる企業は、労働者派遣法第 26 条により、面接や書類での派遣労働者の特定を目的とする行為をしないように努める必要があります。たとえば、試験を行ったり履歴書を求めたりできません。
ただし、派遣労働者側が自主的に履歴書を送ったり、業務開始前に事業所を訪問したりすることは認められています。
派遣可能期間である3年を超えて、同一の事業所で派遣労働者を受け入れることはできません。ただし、以下の場合は、雇用制限の対象外です。
なお、一定の要件を満たした場合、3年を限度として派遣可能期間を延長できます。
どの業務も専門性や特殊性が高いことから禁止されていますが、建設業や医療業などは比較的身近な仕事であることから、つい知らずに労働者を派遣してしまう危険性があります。派遣が認められる例外もしっかり理解した上で、法違反がないように留意しましょう。
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人材派遣を活用するにあたって外せないチェックリストをご紹介します。


