2026年10月施行目前!カスハラ対策義務化・完全ガイド ~今すぐ使えるチェックリスト~
2026/07/24

目次
施行直前、いま人事が押さえるべきこと
2026年10月1日から、企業におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務化されます。施行を目前に控えた今、カスハラ対応を現場の判断や個人の経験に委ねるだけでは十分とはいえません。人事部門が中心となり、制度設計や教育、相談窓口の運用を含めた全社的な体制づくりを進めることが求められます。
この記事では、カスハラ対策義務化の背景や制度のポイントを整理するとともに、人事担当者が押さえておくべき実務対応についてわかりやすく解説します。
カスタマーハラスメント(カスハラ)対策義務化の概要
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先による著しい迷惑行為のうち、社会通念上相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害するものを指します。
【カスタマーハラスメントの例】
- 契約内容の範囲を超える過度なサービス提供の要求
- 殴る・蹴る・つばを吐きかけるなどの身体的暴行
- 人格否定の暴言、土下座の強要、SNSでの誹謗中傷
- 大声による威圧や反社会的な言動
- 同じ質問を執拗に繰り返す行為
- 長時間の居座りや電話によって労働者を拘束する行為
近年、顧客や取引先による過度な要求や威圧的な言動が社会問題となり、従業員の心身への負担や休職・離職の発生につながるケースが増えています。こうした状況から労働者の就業環境を保護することを目的として、2025年に労働施策総合推進法が改正され、2026年10月1日から企業におけるカスハラ対策が義務化されることになりました。
企業に求められるのは、対応方針や相談体制の整備、発生時の記録・フォロー、再発防止措置などの基本対応です。対象は中小企業を含む従業員を雇用する事業者であり、施行までに必要な準備を進めておく必要があります。
なぜ人事が「カスハラ対策」を主導すべきなのか
カスハラは現場で発生するケースが多いものの、その影響は従業員の心身の健康や職場環境にまで及ぶため、企業全体の労務管理課題として捉える必要があります。特に企業には、従業員の安全と健康を守る安全配慮義務があり、カスハラに起因するメンタルヘルス不調への対応も、その重要な責務の一つとなります。
こうした観点から、カスハラ対策は現場任せにするのではなく、人事部門が中心となって体制を整備することが求められます。人事には、方針の策定から運用・教育・相談対応まで含めて一貫した仕組みとして設計し、実効性のあるカスハラ対策を全社的に推進する役割が期待されています。企業として従業員を守る姿勢を明確に示し、トラブル発生時に迅速かつ適切な対応ができる環境をあらかじめ整えておくことが重要です。
企業が整えるべき基本対応
カスハラ対策の義務化に伴い、企業には以下のような体制整備が求められます。
- 基本方針の策定と社内周知・啓発
- 相談窓口の設置と受付フローの明確化
- 現場での初期対応ルールの整備
- 被害を受けた従業員へのフォロー体制
- 管理職・現場責任者への教育
- 再発防止と記録の仕組みづくり
カスハラから従業員を守るには、単にルールを定めるだけでなく、実際に現場で機能する体制をつくることが重要です。企業が準備しておくべき基本的な対応について以下で詳しく解説します。
基本方針の策定と社内周知・啓発
カスハラを許容しない姿勢を示し、従業員を保護する旨の方針を社内に発信します。社内報やパンフレット、社内イントラなどを通じて、どのような行為がカスハラに該当するのか、発生時にどのような対応を行うのかを従業員へ周知・啓発し、組織全体で共通認識を持つことが求められます。また、方針には相談したこと等を理由として不利益な取り扱いをしない旨を定めておくことも重要です。
相談窓口の設置と受付フローの明確化
カスハラ被害を従業員が相談できる窓口を設置し、相談内容に対して適切に対応できる体制を整備します。カスハラの発生時だけでなく、その恐れがある場合や判断が難しい場合も含めて広く対応することが求められます。被害の深刻化を防ぐためには、従業員が相談しやすい環境を整え、早期発見・早期対応につなげることが大切です。
現場での初期対応ルールの整備
カスハラ発生時に担当者が一人で抱え込まないよう、現場での対応方法や手順をあらかじめ整備しておく必要があります。また、現場対応だけでは解決が難しい事案に備え、本社・本部への報告基準や手順を定め、必要に応じて警察や弁護士とも連携できる体制を整えておくことが重要です。
被害を受けた従業員へのフォロー体制
従業員がカスハラ被害を受けた場合は、速やかに安全確保と精神的ケアを行うことが求められます。悪質な言動がある場合は顧客から引き離し、必要に応じて警察や弁護士と連携しながら本人の安全を確保します。また、メンタルヘルス不調が懸念される場合は、産業医やカウンセラーなどの専門家によるケアを提供するなど、心身の健康回復を支援する体制も整えておく必要があります。被害を受けた従業員が安心して相談できるよう、プライバシー保護のために必要な措置を講じ、社内へ周知しておくことも大切です。
管理職・現場責任者への教育
カスハラ対策を機能させるためには、管理職や現場責任者への教育が欠かせません。カスハラの定義や判断基準、相談を受けた際の対応方法、従業員のプライバシー保護などについて理解を深めるとともに、人事や関係部署と速やかに連携できるよう、トラブル発生時の対応フローをあらかじめ周知しておきましょう。
再発防止と記録の仕組みづくり
発生した事案は、対応内容や経過を適切に記録し、再発防止に活用することが求められます。特に、初期対応がきっかけとなってトラブルに発展・深刻化したケースでは、対応手順の見直しやロールプレイングの実施によって再発防止を図ることができます。個人のプライバシーに配慮しつつ、発生事例や対応内容を社内で共有し、研修やマニュアルの見直しに活用することが重要です。
よくある誤解と注意点
カスハラ対策の義務化を前に、制度の趣旨や対象範囲について誤解されるケースも少なくありません。企業が対策を進めるうえでは、カスハラに関する基本的な考え方を正しく理解することが不可欠です。
ここでは、人事担当者が押さえておくべきポイントをご紹介します。
顧客からのクレームがすべてカスハラとは限らない
顧客からの苦情があったからといって、すべてがカスハラに該当するわけではありません。カスハラと判断されるのは、暴言や脅迫、長時間の拘束など、社会通念上相当な範囲を超える行為であり、商品・サービスに対する正当な指摘や改善要求はこれに当たりません。こうした「通常の苦情・クレーム」と「著しい迷惑行為(カスハラ)」を区別し、冷静に判断できる基準を設けておくことが重要です。
カスハラは接客業だけの課題ではない
カスハラというと飲食や小売などの接客業をイメージしがちですが、営業職やコールセンター、医療・介護職などさまざまな現場で発生しています。また、人事・経理などのバックオフィス部門も例外ではなく、顧客や取引先、外部関係者とのやり取りの中で著しい迷惑行為を受けるリスクがあります。業種や職種を問わず発生し得る問題として捉え、全社的な対策を講じることが求められます。
従業員保護と顧客対応品質は両立できる
カスハラ対策は「顧客を拒絶するもの」ではなく、従業員が安全に働ける環境を整えつつ、適切な顧客対応を継続するための仕組みです。先述したように、すべてのクレームがカスハラに該当するとは限りません。正当な意見や要望には組織として誠実に対応し、著しい迷惑行為には毅然とした態度で対処することで、従業員保護と顧客対応品質の両立が可能になります。ただし、「正当か否か」の判断を現場スタッフに求めることは、それ自体が大きな心理的負担となり得ます。前述した「通常のクレーム」と「迷惑行為(カスハラ)」を冷静に判断できる基準を設けておくことに加え、現場だけですべてを判断させるのではなく、本社に引き継いで落ち着いて対応する体制を整えておくことが求められるでしょう。
カスハラ対策は施行日以降で間に合うと考えてはいけない
カスハラ対策の義務化はすべての企業を対象としており、業種や規模を問わず体制整備を進める必要があります。基本方針の策定や相談窓口の整備、管理職への教育などには一定の準備期間がかかるうえ、制度を設計した後も実際に運用しながら課題を洗い出し、改善していくことが求められます。施行日を迎えてから慌てて対応するのではなく、早い段階から計画的に準備を進めることが重要です。
カスハラ対策義務化・実務チェックリスト
カスハラ対策義務化に向けてはさまざまな準備が必要となるため「何から着手すべきかわからない」という声も少なくありません。
そこで、自社の準備状況を網羅的に確認できる実務チェックリストをご用意しました。施行日までに必要な項目が整備できているかを確認し、計画的な準備に役立ててください。
施行前に"運用できる状態"へ
カスハラ対策義務化に向けて重要なのは、制度の内容を理解することだけではありません。実際にカスハラが発生した際に、初動対応や報告ルート、エスカレーションルールが明確になっており、現場が迷わず対応できる体制を整えておくことが重要です。
人事部門としては、制度設計・教育・相談対応の3点を軸に、施行日までに実効性のある運用体制を構築する役割が期待されています。施行直前に慌てて対応するのではなく、今から運用面まで見据えた体制づくりを進めましょう。早期着手は、従業員が安心して働ける環境づくりだけでなく、コンプライアンスリスクの回避や従業員満足度の向上にも直結します。人事が先頭に立ち、計画的な対策を進めましょう。
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