このページでわかること
- 業務委託を始めた後に、自社社員の負担が増えてしまう主な原因
- 業務委託の成否を左右するSVの役割
- 業務委託を成功させるために確認したい6つのポイント
- BPO事業者を選ぶ際に確認しておきたい実績・人材・支援・品質管理のポイント
2026/10/13
監修:アデコ株式会社 執行役員 兼 エンタープライズアウトソーシング事業本部 本部長 久田 昭紀
業務委託は、人手不足への対応や業務効率化、コスト削減、品質向上を目的に、多くの企業で活用されています。しかし、業務委託によって、必ずしも自社社員の負担が減るとは限りません。
業務委託の開始後に「BPO事業者からの確認依頼が増えた」「期待していた品質にならない」「業務が改善せず、コスト効率が上がらない」といった問題が起きることもあります。
ある企業では、業務委託によって管理工数を30%削減する予定でしたが、業務に適したスーパーバイザー(以下「SV」)を配置できず、管理工数が40%増加しました。また、業務委託後も自社社員が日常的にBPO事業者のフォローを続けたことで、かえって自社社員の業務負担が増えたケースもあります。
本記事では、業務委託がうまくいかない原因を整理し、SVの役割、成功のための6つのポイント、BPO事業者を選ぶ際の確認事項を解説します。
目次
業務委託の目的の一つは、定型業務やノンコア業務を外部に任せ、自社社員がより付加価値の高い業務に集中できるようにすることです。ところが、委託後も自社社員の確認や手直しが続けば期待した効果は得られません。
業務委託がうまくいかない理由は一つではありません。業務プロセスや判断基準の引き継ぎが不十分なら、自社社員への問い合わせが増えます。運営スタッフを十分に確保できなければ、SVや既存スタッフの負担が増えます。クライアント企業とBPO事業者の情報共有が不足すれば、成果物や対応方針にもずれが生じます。
業務委託の失敗には、引き継ぎ、人材確保、コミュニケーション、品質管理など複数の要因が関係します。すべてをSV個人の力量で解決することはできません。それでも、日々の運営と改善を担うSVは、業務品質を左右する重要な存在です。
SVは、運営スタッフの進捗を確認するだけの「現場監督」ではありません。現場の安定的な運営を維持し、問題の原因を整理して改善につなげる役割を担います。
例えば、同じミスが続く場合、SVは運営スタッフへ注意するだけでなく、手順書や業務フロー、教育方法に原因がないかを見直します。自社社員への問い合わせが増えている場合は、判断基準や委託元企業との役割分担も見直します。
一方で、SV一人に現場の運営や改善を任せることには限界があります。DX等の専門性の高い業務改善には、専門チームの支援が必要です。また、運営スタッフの採用・補充はBPO事業者の採用力にも左右されます。加えて、業務の品質や運営状況を客観的に確認する体制も欠かせません。
SVが業務改善まで担えない背景には、BPO事業者の運営方針や育成環境が影響している場合があります。代表的な例は次の4つです。
BPOの価格を抑えるため、BPO事業者が自社のSVの教育や人材育成、品質管理への投資を削っている場合があります。SVが十分な研修を受けないまま現場に配置されると、日々の運営や進捗確認、トラブルの対応等に追われ、業務改善まで手が回りにくくなります。
クライアント企業とBPO事業者がSVを「現場を管理する人」とだけ捉えると、業務改善や課題の抽出、提案といった役割が曖昧になります。委託開始前に、SVに期待する役割を確認しておく必要があります。
現場で見つかる課題には、業務プロセスの見直しやゼロからの再設計、あるいは、AI・デジタルツールの活用など、SVだけでは対応できないこともあります。BPO事業者内に専門的な知見やSVへの支援体制がなければ、課題を把握しても改善が進みません。現時点では問題なく業務が回っていても、改善やデジタル化を先送りすることで、業務環境や求められる品質の変化に対応できなくなり、将来的に生産性の低下や品質面のリスクが高まる可能性があります。
BPO事業者にSVを計画的に採用・育成する体制がなければ、経験の浅い人材を配置せざるを得ないことがあります。SVには、業務知識だけでなく、運営スタッフの育成、品質管理、クライアント企業との調整、改善提案など幅広い力が求められます。そのため、BPO事業者に、経験や専門性、適性のある人材をSVとして採用し育成できる体制がないと、業務の運営が不安定になるだけでなく、業務品質のばらつきや改善の停滞につながる可能性があります。
業務委託を安定して運営し、改善を続けるには、SVの適性だけでなく、人材確保、専門部署による支援、品質管理など、BPO事業者の運営体制も重要です。クライアント企業は、BPO事業者を選定する際に、特に次の6つのポイントを確認しておきましょう。
業務によって、SVに求められる知識や経験は異なります。BPO事業者は対象業務を理解し、業務特性に合ったSVを配置する必要があります。
一方、業務に合わないSVが配置されると、運営スタッフへの指示や判断が曖昧になり、自社社員への確認やフォローが増える原因になります。
委託開始前に、BPO事業者とクライアント企業との間で、SVが担当する業務と自社社員が判断する業務を明文化しておきましょう。進捗管理、品質管理、運営スタッフの教育、課題の報告、改善提案など、SVに期待する役割も具体的に決めます。
SVの責任範囲が曖昧だと、問題が起きるたびに自社社員へ確認や判断が戻り、業務委託による負担軽減につながりにくくなります。
業務委託の開始後は、運営スタッフの退職や入れ替わりを完全に避けることはできません。欠員が出ても必要な人材を継続的に確保できることが、安定した運営の前提です。
人員の補充が遅れると、既存の運営スタッフやSVに負担が集中します。SVが新人教育に追われれば、品質管理や改善に使える時間も減ってしまいます。BPO事業者の採用力や、欠員時の補充方法を確認しておきましょう。
業務改善を進める中では、業務プロセスの抜本的な見直しや再設計、AI・デジタルツールの活用など、SVだけでは対応が難しい課題もあります。そのような場合に備え、BPO事業者に業務設計やAI・デジタル活用などの専門チームがあり、必要に応じてSVを支援できるかを確認しましょう。
専門チームの支援があれば、SVは日々の業務を運営しながら、専門的な知見を得て現場の課題を改善できます。一方、こうした支援がなければ、現時点では業務が回っていても改善が進まず、業務環境やテクノロジーの変化に対応できなくなることで、将来的に生産性の低下や品質面のリスクが高まる可能性があります。
業務品質をSVや営業担当者の報告だけで判断すると、現場では「当たり前」になっている問題を見落とすことがあります。そのため、BPO事業者の運営チームとは別の立場から、定期的な監査や品質評価を行っているかを確認しましょう。第三者の視点を入れることで、クライアント企業や運営チームが気づいていない課題を発見しやすくなります。
また、評価して終わりではなく、指摘された課題を実際の業務改善に反映できているかも重要です。
SVには、運営スタッフへの指示、品質管理、クライアント企業との調整など、さまざまな役割があります。日々の運営では、対応方針の判断に迷ったり、SVだけでは判断しにくい問題が生じたりすることもあります。こうした際に、SVが相談でき、必要なサポートを受けられるチームや窓口がBPO事業者内にあるかを確認しましょう。
4が専門知識を補う支援であるのに対し、6は日々の運営に関する判断や対応をSVだけに抱え込ませないための支援です。SVが必要なときに相談・連携できる環境は、安定した現場運営につながります。
上記の6つを実現できるかどうかは、BPO事業者によって異なります。提案価格だけでは、委託後の支援や品質管理までは分かりません。
BPO事業者を比較する際は、次の項目について、実績や運用方法まで確認しましょう。
| 確認項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 類似業務の実績 | 自社と近い業種・業務・規模の受託実績があるか。実績件数だけでなく、どのような課題を改善したかを確認。 |
| 人材確保力 | 欠員が発生した場合に、必要な運営スタッフをどのように補充するか。採用力や、常時稼働可能な人材をどの程度確保しているのかを確認。 |
| SVの育成 | SV向けの研修や教育制度があるか。着任後も継続して育成・評価しているかを確認。 |
| 専門チームの支援 | DX、業務改善、システムなど、現場だけでは解決しにくい課題を支援できる部署や専門人材がいるか。 |
| 改善提案 | 決められた業務をこなすだけでなく、運営開始後も課題を見つけ、改善案を提案できるか。定例会などで改善提案を行う機会があるか。 |
| 品質管理 | KPIや品質基準が明確か。現場とは別の立場による評価や監査があるか、問題発生時のエスカレーション方法が決まっているか。 |
価格だけで比較すると、SVの育成、人材確保、改善支援、品質管理などの違いを見落としやすくなります。見積金額とあわせて、「その価格でどのような運営が行われるのか」を確認することが大切です。
業務委託がうまくいかない原因は、SVだけにあるわけではありません。引き継ぎ、人材確保、情報共有、専門部署の支援、品質管理などが運営に影響します。
その中でSVは、日々の現場運営と業務改善をつなぐ役割を担います。SVが力を発揮するには、業務に合った配置、人材確保、専門部署や上長の支援、客観的な品質評価が必要です。
BPO事業者を選ぶ際は、価格や実績だけでなく、委託後の運営方法、そして、SVへの支援体制の有無を確認しましょう。すでに業務委託を利用している場合も、自社社員のフォローが増えている、業務の改善が進まないと感じたときは、SVの役割や人員体制、支援・品質管理の方法を見直すことが改善の手がかりになります。
アデコでは、業務の可視化やプロセスの見直し、人材配置、運営開始後の改善まで、クライアント企業の課題に応じたアウトソーシング・BPOサービスを提供しています。業務委託の導入や運営体制の見直しをご検討の際は、ぜひご相談ください。



