このページでわかること
- 人を増やしても業務停滞が解消しない理由
- 業務停滞の原因を見つけるために確認すべき項目
- 廃止・簡素化を含め、業務の特性に応じて改善方法を選ぶ考え方
- DXを進めるために外部の専門家やBPOを活用する考え方
2026/09/10
監修:
アデコ株式会社 執行役員 兼 エンタープライズアウトソーシング事業本部
本部長 久田 昭紀
人手不足によって業務が回らない。新しい人材を採用しても、なかなか定着しない。DXを進めたいものの、日々の業務に追われて着手できない。こうした悩みを抱える企業は少なくありません。
業務が停滞すると、「人員を増やすこと」が最初の解決策になりがちです。しかし、業務の停滞の原因が、その業務の複雑なプロセスや属人化にある場合、人を増やしても管理や教育の負担が増え、根本的な解決につながらないことがあります。
業務停滞を解消するには、まず現在の業務を可視化し、どこに負担や非効率が生じているのかを明らかにする必要があります。そのうえで、不要な業務の廃止や手順の簡素化を行い、自動化・デジタル化、外部委託など、課題に合った改善方法を検討します。本記事では、業務停滞が起きる理由と、業務量・処理時間・待ち時間などを確認する方法を整理し、業務の見直しからDX・BPOの活用につなげる進め方を解説します。
この記事の目次
業務停滞の原因は、単純な人員不足とは限りません。業務量に対して処理できる人員や時間が足りない場合だけでなく、業務の進め方や役割分担、システムの使い方が原因になっている場合もあります。
業務が複雑化・属人化し、新しい人材が短期間で習得しにくい状態では、新たに人材を採用しても、新人への教育やフォローを既存社員が担うため、かえって現場の負担が大きくなることがあります。また、新人が業務を習得するまでに時間がかかるため、戦力になるまで業務が回らない状態が続いてしまいます。
業務が回らない状態が続くときは、その部署の配置人数や採用人数だけを見るのではなく、「なぜこの業務には多くの人手が必要なのか」「なぜ多くの工数が必要なのか」「なぜ習得に時間がかかるのか」まで確認する必要があります。業務停滞の原因は、人員数だけでなく、業務そのものや業務の進め方に隠れていることがあります。
まず、業務を停滞させる原因を見つけるために、業務フロー全体と業務量を可視化します。誰が、何を、どの手順で行っているのか。どこで確認や差し戻しが発生しているのか。どの判断が特定の人に依存しているのか。こうした内容を整理すると、業務が滞る原因を特定しやすくなります。
例えば、実際に作業している時間より、確認や承認を待っている時間の方が長い場合は、増員ではなく、業務フローや役割分担の見直しによって停滞を解消できる可能性があります。
業務を可視化した後は、すべての作業をそのまま残すのではなく、不要な作業を廃止し、重複している作業や承認工程を減らします。そのうえで、判断基準や手順を標準化します。AIやデジタルツールによる自動化を検討する場合も、現在の手作業をそのままシステムに置き換えるのではなく、デジタルツールを使う前提で業務フローを見直すことが必要です。
業務の内容と流れが整理されると、自動化できる業務、自社社員が担うべき業務、外部へ委託できる業務など、それぞれに適した改善方法を検討しやすくなります。
業務を見直した後は、それぞれの課題や特性に応じてどうすれば効率化できるのかを検討します。
例えば、目的が明確でない作業や重複している作業は、廃止・簡素化を検討します。定型的な入力や集計など、判断基準が明確な業務は、AI・デジタルツールによる自動化を検討できます。一方、経営判断や自社の競争力に直結する業務は、自社社員が中心となって担います。また、継続的に発生し、業務の範囲や品質基準を定められる業務は、業務運営や人員管理まで含めてBPO事業者に委託することも選択肢の一つです。
業務の特徴と検討できる改善方法
| 業務の特徴 | 検討できる改善方法 |
|---|---|
| 目的が不明確、または重複している | 廃止・簡素化 |
| 判断基準が明確で、定型的な処理が多い | 自動化・デジタル化 |
| 経営判断や自社固有の知識が必要 | 自社社員が担う |
| 継続的に発生し、範囲や品質基準を定められる | BPO |
AI・デジタルツールの活用が有効だと分かっても、社内に必要な知識やノウハウがなかったり、日々の業務に追われてDX化に取り組む時間を確保できなかったりすると、DXを進めることは難しくなります。
こうした場合には、外部の力を活用する代表的な方法として、次の2つがあります。1つ目は、DXそのものを外部の専門家に支援してもらう方法で、2つ目は、既存業務をBPOし、自社社員がDXに取り組む時間をつくる方法です。
自社内に、業務分析や業務プロセスの見直し、AI・デジタルツールの選定や導入に必要な知識が不足している場合は、外部の専門家に支援を依頼する方法があります。
外部の専門家は、現場でどのように業務が行われているのかを確認し、見直すべき業務と自動化できる工程を整理します。自社だけでは捉えにくい課題を明らかにし、自動化する部分だけでなく、その前後の工程を含めて業務フローを見直すことができます。
自社内にDXを進めるための人材や知識があっても、日々の業務に追われ、業務改善やDXの検討に十分な時間を使えなければ、DXは進みません。
その場合は、外部へ委託できる既存業務をBPO事業者に任せ、自社社員がDXや業務改善に取り組む時間を確保する方法が有効です。
外部のDX支援とBPOのどちらが適しているかは、社内にDXを進めるための人材や知識があるか、既存業務がどの程度自社社員の負担になっているかによって異なります。必要に応じて、外部のDX支援とBPOを組み合わせることもできます。
DXやBPOは、導入すること自体が目的ではありません。DXやBPOを業務改善につなげるために、次の4点を整理しておきます。
処理時間を減らす、ミスを減らす、自社社員の負担を軽くするなど、取り組みによって何を変えたいのかを決めます。目的が曖昧なままでは、ツールの導入や外部委託だけが進み、成果を判断できません。
業務を見直したうえで、自社社員が担う業務、AI・デジタルツールを活用する業務、外部へ委託する業務を整理します。BPOを利用する場合は、自社とBPO事業者がそれぞれどこまで判断・対応するのか、問題が発生した場合にどのように連携するのかも決めておきます。
処理時間、作業工数、エラー率、問い合わせ件数など、改善したい内容に合わせて指標を設定します。運用開始後に数値を確認することで、期待した効果が出ているか、さらに見直すべき業務がないかを判断できます。
運用開始後は、DX支援企業やBPO事業者などの外部パートナーとともに、定期的に業務の状況を確認し、必要に応じて見直します。業務量や事業環境、利用者から求められる対応は変化します。導入時に決めた業務フローや役割分担を固定せず、実際の運用で見つかった課題や環境の変化に応じて更新することが大切です。
アデコでは、大手エネルギー企業に対し、現場の業務を踏まえたDX支援を行いました。アデコは、現場での業務の進め方や課題を確認し、業務プロセスの見直しからデジタルツールの選定・導入、運用までを支援しました。
アデコは、デジタルツールを導入するだけでなく、業務プロセスの自動化やデータの統合・分析を含めて、業務全体の改善を進めました。
その結果、クライアント企業では業務時間やコストが削減され、自社社員がより付加価値の高い業務に時間を使えるようになりました。また、アデコがデジタルツールの選定から導入、運用までを支援したことで、自社社員にかかる導入負担を抑えながらDXを進めることができました。
このように、DXを進める際には、デジタル技術の知識だけでなく、現場の業務を理解し、実際の課題に合わせて改善方法を選ぶことが重要です。
BPO事業者がDX支援までを行うは、日々の運営で得られた業務データや現場の課題を活用し、業務をさらに改善することができます。外部パートナーを選ぶ際は、業務運営と業務改善を分けて考えず、現場の実態を踏まえて、業務の改善を進められるかどうかを確認するとよいでしょう。
人員を増やすことだけが、業務の停滞に対する解決策ではありません。属人化や複雑な業務プロセスが残っていれば、新しい人材を加えても教育や管理の負担が増え、人手不足が解消しにくい状態が続きます。
業務の停滞を解消するためには、まず現在の業務を可視化し、不要な作業や重複した手順を減らし、属人化している判断を見直します。そのうえで、自社社員が担う業務、自動化・デジタル化する業務、BPO事業者へ委託する業務に分けて、自社や現場に適した改善方法を検討します。自社にDXを進めるための知識が不足している場合は外部の専門家に支援を依頼し、DXに取り組む時間が不足している場合は既存業務をBPO事業者へ委託するという選択肢もあります。
大切なのは、DXやBPOを導入すること自体を目的にするのではなく、業務停滞の原因を明らかにしたうえで、自社の課題に合った方法を選ぶことです。運用開始後も効果を確認しながら業務を見直すことで、継続的に業務を改善していくことができます。
アデコでは、現状業務の可視化や業務プロセスの見直し、DX・AI活用、BPOの設計・運営まで、企業の課題に応じた支援を行っています。業務停滞や人手不足、DX推進についてお悩みの際は、ぜひご相談ください。



