人事ノウハウ

コーチングとは?ティーチングとの違いや企業での効果・活用方法を解説

2026/07/31

コーチングとは、対話を通じて相手の気づきや主体的な行動を促す人材育成手法です。

このページでは、ティーチングとの違いをはじめ、企業がコーチングを導入する目的やメリット・効果、適していない場面、傾聴・質問などの基本スキル、GROWモデルを活用した進め方をわかりやすく解説します。

管理職研修や1on1、次世代リーダー育成、エグゼクティブコーチングなど、企業における具体的な活用例も紹介します。

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コーチングとは

コーチングとは、対話を通じて相手の気づきや内省を促し、自ら課題の解決や目標達成に向けて行動できるよう支援する手法です。主に傾聴や質問を用いて考えを整理し、本人の納得感や主体性を引き出します。ただし、知識や経験が不足している場合は、ティーチングや助言との使い分けが必要です。

ビジネスにおけるコーチングとは、従業員の成長や目標達成、行動改善を対話によって支援する人材育成手法です。1on1や部下育成、管理職研修、次世代リーダー育成などに活用されます。個人の希望だけでなく、本人の役割や組織目標も踏まえて行う点が特徴です。

具体的には企業では、主に次のような場面でコーチングが活用されています。

企業でコーチングが活用される場面の例

  • 上司と部下の1on1ミーティング
  • 管理職による部下育成
  • 管理職向けのコーチング研修
  • 昇進や配置転換後の役割適応支援
  • 次世代リーダーの育成
  • 経営層を対象としたエグゼクティブコーチング
  • チームや組織全体の課題解決

コーチングとティーチングの違い

コーチングとティーチングの違い
手法主な目的進め方適した相手支援する側の役割
コーチング自発的な行動や問題解決を促す質問や傾聴によって考えを引き出す一定の知識や経験がある人相手が考える過程を支援する
ティーチング知識や技術を習得させる指示や説明によって方法を教える知識や経験が少ない人正しい方法や手順を伝える

コーチングは、傾聴や質問を通じて相手の考えを引き出し、自発的な行動や問題解決を促す手法です。一方、ティーチングは、必要な知識や技術を具体的に教える手法です。一定の知識や経験がある相手にはコーチング、経験が浅い相手にはティーチングが適しています。実務では、相手の状況に応じて両者を使い分けることが重要です。

企業でコーチングが注目される背景

企業では、人材育成を担う管理職の不足や、従業員の主体性を引き出すマネジメントが課題となっています。厚生労働省の調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があると回答した事業所は79.9%でした。なかでも「指導する人材が不足している」が59.5%と最も多くなっています。こうした背景から、対話を通じて従業員の成長や自発的な行動を支援するコーチングが注目されています。

人材育成に関する問題点の内訳
問題点割合
指導する人材が不足している59.5%
人材を育成しても辞めてしまう54.7%
人材育成を行う時間がない47.4%
鍛えがいのある人材が集まらない26.7%
育成を行うための金銭的余裕がない14.5%
人材育成の方法がわからない9.9%
適切な教育訓練機関がない8.9%
技術革新や業務変更が頻繁なため、人材育成が無駄になる1.9%
その他の問題7.4%

参考:厚生労働省「令和6年度『能力開発基本調査』の結果について」

企業がコーチングを導入する主な目的

企業がコーチングを導入する目的は、従業員の主体性や管理職の育成力を高め、個人と組織の成長につなげることです。対話を通じて本人の内省や気づきを促し、課題の解決や行動の変化を支援します。

主な目的
目的理由
従業員の自律的な学習と行動を支援する上司が答えを一方的に与えるだけでは、従業員が指示待ちになる可能性があります。質問や傾聴を通じて本人に考える機会を与えることで、自ら目標や課題を整理し、解決に向けて行動する力を育てます。
管理職のマネジメント・部下育成力を高める管理職には、業務の指示や進捗管理だけでなく、部下の成長を支援する役割も求められます。コーチングを学ぶことで、部下の考えを引き出し、それぞれの経験や状況に合わせて育成する力を高められます。
昇進や役割変更に伴う課題への適応を支援する昇進や配置転換によって求められる役割が変わると、仕事の進め方や周囲との関わり方を見直す必要があります。コーチングを通じて新たな課題や役割を整理し、本人が必要な行動を考えられるよう支援します。
経営層や次世代リーダーの行動変容を支援する経営層や次世代リーダーには、複雑な課題への判断や組織全体を見据えた行動が求められます。コーチとの対話によって自身の考え方やマネジメントを振り返り、新たな視点の獲得や具体的な行動変容につなげます。

企業では、管理職や経営層の育成、1on1、組織開発など、さまざまな場面でコーチングが活用されています。

企業におけるコーチングの主な活用例
活用例概要
管理職向けコーチング研修管理職が傾聴や質問などのスキルを学び、部下の考えや主体性を引き出せるようにする研修です。
1on1ミーティングへの導入上司が一方的に話すのではなく、質問や傾聴を通じて部下の課題や考えを整理するために活用します。
昇進や配置転換後の役割適応支援新しい役割で求められることや課題を整理し、本人が必要な行動を考えられるよう支援します。
エグゼクティブコーチング経営者や経営幹部が外部コーチとの対話を通じて、経営課題や自身のリーダーシップを振り返る取り組みです。
社内コーチの育成人事担当者や管理職を社内コーチとして育成し、従業員を継続的に支援できる体制を整えます。
チーム・組織へのコーチング個人だけでなくチーム全体を対象に、目標や役割、コミュニケーション上の課題を整理します。

企業がコーチングを活用するメリット・効果

コーチングを活用すると、従業員が自ら考えて行動する力や、管理職が部下の成長を支援する力を高める効果が期待できます。ここでは、企業がコーチングを取り入れる主なメリットを紹介します。

対話の中で質問を受けることで、従業員は漠然としていた考えを言葉にしやすくなります。目指す状態と現状の差や、解決すべき課題を整理することで、今後取り組むべき行動も明確になります。

上司から指示された行動ではなく、従業員自身が考えて決めた行動は、納得感を持って実践しやすくなります。実行後の振り返りも継続することで、自ら改善策を考えて行動する習慣の形成につながります。

コーチングでは、目標の設定から実行、振り返りまでを継続的に支援します。業務上の課題に対して試行錯誤する機会が増えるため、問題解決力や意思決定力、周囲への働きかけといったスキルの向上が期待できます。

自分で考えた行動を実践し、成果や成長を確認することで、「自分ならできる」という自己効力感を得やすくなります。また、本人の希望や価値観を踏まえて目標を設定することは、仕事への納得感や意欲を高めることにもつながります。

コーチングを学ぶことで、管理職は一方的な指示や助言だけでなく、傾聴や質問を通じて部下の考えを引き出せるようになります。部下の経験や課題に応じて、コーチングとティーチングを使い分ける力も身につけられます。

コーチングが適していない場面とデメリット

コーチングは従業員の主体性や成長を支援する手法ですが、あらゆる場面で有効とは限りません。状況に合わない使い方をすると、意思決定が遅れたり、相手に負担を与えたりする可能性があります。代表的な注意点を確認しましょう。

事故や重大なトラブルへの対応、顧客からのクレーム、安全に関わる業務など、迅速で明確な判断が必要な場面にはコーチングが適していません。質問を重ねて本人に考えてもらうことで、対応が遅れたり、誤った判断につながったりするおそれがあります。

このような場面では、上司や責任者が状況を判断し、取るべき行動や手順を具体的に指示する必要があります。緊急対応が落ち着いた後に、「どのように判断したか」「次回はどう対応するか」を振り返る場面では、コーチングを活用できます。状況に応じて指示と対話を切り替えることが重要です。

新入社員や未経験の業務を担当する従業員は、考えるための知識や判断材料を十分に持っていない場合があります。その状態で「あなたはどうすればよいと思いますか」と質問しても、適切な答えを導き出せず、かえって不安や負担を感じさせる可能性があります。

まずはティーチングによって、業務の目的、基本的な知識、手順、注意点などを具体的に教えることが必要です。一定の知識や経験を身につけた後に、対応方法や改善策を本人に考えてもらうことで、コーチングが機能しやすくなります。相手の習熟度に応じて両者を使い分けましょう。

コーチングでは、本人が自分の目標や課題について考え、行動に移すことが前提となります。そのため、本人が目的を理解していない場合や、会社から一方的に参加を命じられた場合は、十分な効果を得られない可能性があります。

質問に対して表面的な回答しか得られず、対話そのものが負担になることも考えられます。実施前に、コーチングの目的や進め方、本人に期待することを説明し、参加に対する納得を得ることが大切です。

意欲が低い理由が業務負担や職場への不満にある場合は、対話だけでなく、業務や職場環境の見直しも必要です。

上司は部下を支援する立場である一方、人事評価や業務の割り振りにも関わります。そのため、部下が「本音を話すと評価に影響するのではないか」と不安を感じ、失敗や悩みを率直に話せない場合があります。

本音を話せない状態では、表面的な課題しか把握できず、コーチングが十分に機能しません。上司は、相手の発言をすぐに否定したり評価したりせず、安心して話せる関係を築く必要があります。テーマによっては、人事担当者や外部コーチなど、評価に直接関わらない第三者が担当することも選択肢です。

企業が外部コーチや社内コーチを利用する場合、本人が話した内容を会社へどこまで共有するかが曖昧だと、安心して対話できません。本人の同意なく発言内容が上司や人事へ伝われば、信頼関係が損なわれるだけでなく、その後のコーチングに支障が生じる可能性があります。開始前に、コーチングの目的、記録の扱い、会社へ報告する項目、守秘義務の例外などを明確にしましょう。企業には実施状況や目標の達成度のみを共有し、具体的な発言内容は本人の同意なく共有しないなど、情報管理のルールを決めておくことが重要です。

業務量の過多、人員不足、不公平な人事制度、職場のハラスメントなど、原因が組織や環境にある問題は、本人の考え方や行動を変えるだけでは解決できません。

問題の原因を本人の主体性不足として扱うと、従業員に責任を押しつけることにもなりかねません。また、心身の不調や深刻な悩みがある場合は、コーチではなく、医療機関や産業保健スタッフなどの専門家による支援が必要です。

コーチングを実施する前に問題の性質を見極め、業務改善、制度の見直し、相談窓口への案内など、必要な対応と組み合わせることが求められます。

コーチングで使われる基本スキル

コーチングでは、相手の考えや行動を引き出すために、傾聴や質問などのスキルを活用します。代表的な基本スキルを紹介します。

コーチングで使われる基本スキル
基本スキル概要
傾聴傾聴とは、相手の話を途中で遮らず、言葉の内容だけでなく表情や声の調子にも注意を向けて聴くことです。すぐに評価や助言をせず、相手が安心して考えを言葉にできるよう支援します。
質問質問は、相手の考えを整理し、新たな気づきを促すために用います。「どうしたいですか」「ほかに方法はありますか」など、自由に答えられる質問を使い、特定の答えへ誘導しないことが大切です。
信頼関係の構築コーチングでは、相手が安心して本音や悩みを話せる関係づくりが欠かせません。相手の意見を尊重し、否定せずに受け止めることで、率直な対話が生まれやすくなります。
承認承認とは、相手の成果だけでなく、努力や変化、強みを具体的に認めることです。「以前より説明が分かりやすくなった」など、事実に基づいて伝えることで、自信や次の行動を後押しします。
フィードバックフィードバックでは、相手の行動について、良かった点や改善点を具体的に伝えます。人格を評価するのではなく、観察した事実をもとに伝え、今後の行動を本人と一緒に考えることが重要です。

コーチングの基本的な進め方

コーチングでは、目的を共有したうえで、目標の設定、現状の整理、行動の決定、振り返りへと進めます。基本的な流れを紹介します。

はじめに、コーチングを行う目的や、本人・コーチ・企業それぞれの役割を確認します。面談内容を誰にどこまで共有するかも、事前に明確にしておくことが大切です。

今回の対話で扱うテーマと、目指す状態を決めます。「何を実現したいのか」「どのような状態になればよいのか」を具体的にします。

目標に対して、現在どのような状況にあるかを整理します。本人の認識だけでなく、これまでの行動や結果、課題となっている要因も確認します。

目標を達成するために、どのような方法が考えられるかを検討します。すぐに一つの答えへ絞らず、複数の選択肢を出すことが重要です。

選択肢の中から、実際に取り組む行動を決めます。「何を」「いつまでに」「どのように行うか」を具体化し、実行しやすい形にします。

行動した結果を確認し、うまくいった点や改善すべき点を整理します。振り返りを次の目標や行動につなげることで、継続的な成長を支援します。

GROWモデルを使ったコーチングの進め方

GROWモデルは、コーチングで広く活用されている代表的なフレームワークです。対話の流れを「目標」「現状」「選択肢」「行動」の4段階に整理することで、相手の考えを引き出しながら、具体的な行動までつなげやすくなります。管理職による部下育成や1on1ミーティングなど、ビジネスの場面でも活用されています。

まず、本人が実現したい目標や理想の状態を明確にします。「どうなりたいのか」「今回の対話で何を得たいのか」などを確認し、目指す方向を共有します。

目標に対して、現在どのような状況にあるかを確認します。これまでの行動や結果、課題となっていることを整理し、目標との間にある差を明らかにします。

目標を実現するために、どのような方法があるかを幅広く考えます。「ほかにできることはないか」と問いかけ、すぐに一つの答えへ絞らず、複数の選択肢を検討します。

選択肢の中から、本人が実際に取り組む行動を決めます。「何を、いつまでに行うか」を具体化し、実行への意思や必要な支援も確認します。

コーチング研修を検討しているならアデコへご相談ください

変化の激しいビジネス環境において、コーチング研修や1on1ミーティング研修は、対話を通じた信頼関係構築と行動変容を支援する手法として注目されています。対話力向上や部下育成スキルの強化は、組織のコミュニケーション文化を成熟させ、人材の可能性を引き出す鍵となります。

アデコ(Adecco)のコーチング研修プログラムは、管理職・リーダーが質の高い対話を通じて、チーム全体のパフォーマンス向上と組織の活性化を実現するためのコーチングスキルを体系的に習得できるよう設計されています。

詳しくは以下のページをご確認ください。

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