このページでわかること
アノテーションとは
アノテーションは、画像・音声・テキスト・動画などのデータに意味や分類、位置情報などのラベルを付与し、AIや機械学習が学習に使う教師データを整備する作業です。生成AIや画像認識、音声認識の活用が広がる中で、その重要性が高まっています。
アノテーション業務で押さえたいポイント
利用目的に合わせてアノテーションの内容と粒度を決め、ラベルの定義や判断基準を明文化することが重要です。少量データで試行してから本作業へ進み、作業者による判断のばらつきを抑えながら、アノテーション後の品質チェックまで行う必要があります。
自動化・外部委託を進める際の注意点
自動アノテーションは作業負担の軽減に役立つ一方、結果を人が確認・修正する工程が欠かせません。外部委託する場合は、作業範囲、品質基準、納品形式、セキュリティ要件まで具体的に共有することが大切です。Adecco(アデコ)では、業務分析、仕様書作成、運用体制の立ち上げ、進捗・品質管理、運用改善まで一貫して支援しています。 アノテーション業務の効率化や外部委託をご検討ならぜひAdecco(アデコ)にご相談ください。
アノテーションは画像・音声・テキストなどのデータに意味やラベルを付与する作業です。生成AIや画像認識、音声認識などの普及に伴って重要性が高まっています。
このページでは主な種類や進め方、品質を高めるポイント、自動化の事例、外部委託する際の注意点をわかりやすく解説します。
AI活用に向けてデータを整備したいものの、「どのようにラベルを付ければよいのか」「作業者をどう確保するのか」「品質をどう担保するのか」に悩む企業も少なくありません。
このページでは作業者の確保やルール設計、品質管理に課題を感じている企業様向けに、外部委託を検討する際の注意点や委託先選びのポイントも紹介します。アノテーション業務の効率化や安定した運用体制の構築を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
アノテーションとは
アノテーションとは、画像・動画・音声・テキストなどのデータに、意味や分類、対象物の位置といった情報をラベルやタグとして付与する作業です。ラベル付けやラベリングと似たような意味で使われることもあります。
付与された情報は、AIや機械学習モデルがデータの内容を正しく認識し、判断するための「教師データ」として活用されます。
たとえば、画像内の人物や車を枠で囲む、文章に「肯定」「否定」などの分類を付ける、音声を文字に書き起こすといった作業がアノテーションにあたります。データの種類や開発するAIの目的によって、必要な作業方法や求められる精度は異なります。
アノテーション業務が重要な理由
画像認識や音声認識、自然言語処理、生成AIなどの活用が広がり、高品質な学習データを整備するためのアノテーション業務は重要性を増しています。一方で、大量のデータを一定の基準で処理するには、多くの人員や作業時間が必要です。作業ルールの作成、担当者の教育、進捗管理、成果物の品質確認まで自社で対応しなければならない場合もあります。
そのため、社内のリソースが不足している場合や、短期間で大量のデータを処理したい場合、専門的な判断や厳格な品質管理が求められる場合には、アノテーション業務を専門会社へ外部委託する方法があります。外部委託を活用することで、必要な作業体制を確保しながら、AI開発を担当する社内人材をモデル設計や検証などの中核業務に集中させやすくなります。
アノテーションの種類
アノテーションは、対象となるデータの形式によって、画像・テキスト・音声・動画などに分けられます。また、同じ画像アノテーションでも、画像全体に分類ラベルを付ける方法や、対象物の位置・輪郭を指定する方法など、AIに学習させる内容によって作業方法が異なります。
- 画像アノテーション
- テキストアノテーション
- 音声アノテーション
- 動画アノテーション
画像アノテーション
画像アノテーションには、画像全体にラベルを付ける「画像分類」、対象物を矩形で囲む「バウンディングボックス」、対象物の輪郭に沿って領域を指定する「セグメンテーション」などがあります。目的とするAIの処理によって、必要なアノテーション方法は異なります。
【画像アノテーションの例】
テキストアノテーション
テキストアノテーションは、文章や単語に言語的な情報を付与する作業です。代表例として、文章を単語に分割して品詞を付ける形態素・品詞アノテーション、単語や文節の関係を示す係り受けアノテーション、主語・目的語・述語の関係を示す述語項構造アノテーションなどがあります。
【テキストアノテーションの例】
音声アノテーション
音声アノテーションでは、発話内容の文字起こしのほか、音声を構成する音素やイントネーションなどの情報を付与します。音声認識や音声翻訳、話者識別などのAIを開発するための学習データとして利用されます。
【音声アノテーションの例】
動画アノテーション
動画アノテーションは、動画を構成する各フレームに対象物の位置や種類を付与したり、同じ対象物に共通のIDを付けて動きを追跡したりする作業です。静止画像のアノテーションに加えて、対象物の時間的な変化を記録する点が特徴です。
【動画アノテーションの例】
アノテーション業務の自動化
アノテーションは、人が画像やテキストなどを一件ずつ確認してラベルを付けるだけでなく、AIやプログラムを活用して一部の作業を自動化することも可能です。
代表的なのは、少量のデータを人がアノテーションし、そのデータを学習したAIに残りのデータを処理させる方法です。また、実際のデータを収集して人がラベルを付ける代わりに、学習用のデータと正解ラベルをプログラムで同時に生成する方法も研究されています。
アノテーションを自動化することで、大量のデータを処理するための作業時間や人的負担を軽減できる可能性があります。ただし、自動的に付与されたラベルが常に正しいとは限りません。そのため、実際にはAIによる自動処理と、人による確認・修正を組み合わせて運用することが一般的です。
自動化の例1:少量の手動データをもとにAIで大量のアノテーションを行う
農研機構では、農作物の画像を対象とした自動アノテーションプログラムを開発しています。
このプログラムでは、最初に対象物約100か所を人が手作業でアノテーションし、そのデータを使って一次検出AIを作成します。続いて、そのAIを利用して1万か所以上の対象物を自動的に検出し、アノテーションを付与します。
イチゴの花約1万か所を対象とした実証では、すべてを手作業でアノテーションした場合に16.6時間かかっていた作業が、プログラムの利用によって3.3時間となり、作業時間が約5分の1に短縮されました。
一方、自動検出された結果には誤りが含まれる可能性があるため、人が目視で確認し、必要に応じて修正したり、誤ったデータを学習対象から除外したりする工程が設けられています。
この方法を活用すれば、人がすべてのデータを一から処理する場合と比べて、アノテーションに必要な工数を減らせる可能性があります。ただし、効率化の効果は、対象となるデータの種類や複雑さ、求められる精度によって異なります。
参考:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構「(研究成果) AI利用を促進!農作物のアノテーションを効率化するプログラムを開発 」
自動化の例2:学習用データと正解ラベルを自動生成する
アノテーションの自動化には、AIが既存のデータへラベルを付ける方法だけでなく、学習に使用する画像と正解ラベルをプログラムで同時に生成する方法もあります。
産業技術総合研究所は、数式を使って大量の画像パターンと教師ラベルを自動生成し、実際の画像や人によるアノテーションを使わずにAIを事前学習させる手法を開発しました。
画像認識の検証では、人がラベルを付けた実画像で学習したAIの認識精度が81.8%だったのに対し、数式で自動生成したフラクタル画像を使ったAIは82.7%の認識精度を記録しています。
この研究は、すべてのAI開発で人によるアノテーションが不要になることを示すものではありません。しかし、大量の実画像を収集して一件ずつラベルを付けなくても、AIの学習に利用できるデータを準備できる可能性を示しています。
今後は、実際のデータに人がラベルを付ける方法に加えて、自動アノテーションや合成データを組み合わせることで、学習データの作成を効率化する取り組みが広がると考えられます。
参考:国立研究開発法人産業技術総合研究所「大量の実画像データの収集が不要なAIを開発」
アノテーションのやり方、ポイントについて
アノテーションでは、単に大量のデータへラベルを付けるだけでなく、AIの利用目的に合ったルールを設計し、一定の品質で作業を続けられる体制を整えることが重要です。
作業者によって判断が異なったり、必要なデータが不足したりすると、完成した教師データだけでなく、それを学習したAIの精度にも影響する可能性があります。アノテーションを自社で行う場合も外部へ委託する場合も、以下のポイントをあらかじめ確認しておきましょう。
- 利用目的に合わせてアノテーションの内容と粒度を決める
- ラベルの定義や判断基準を明文化する
- 少量のデータで試行してから本作業を始める
- 作業者による判断のばらつきを抑える
- アノテーション後の品質チェックを行う
利用目的に合わせてアノテーションの内容と粒度を決める
アノテーションを行う際は、まず利用目的を明確にし、対象とするデータや付与するラベル、判断基準などを定めます。そのうえで、作業者によって判断がばらつかないよう、アノテーションのルールを仕様書やガイドラインとして整理します。
たとえば画像アノテーションの場合、画像全体に「正常」「異常」といったラベルを付ける方法もあれば、対象物を矩形で囲う方法や、対象物の輪郭に沿って領域を指定する方法もあります。細かいアノテーションほど多くの情報を付与できますが、その分、作業時間や費用も増える傾向があります。
厚生労働省の資料でも、開発するAIによってアノテーションの方法や粒度が異なるとされており、病名のみを付与する場合と、細胞単位でマーキングする場合などが例示されています。また、初めからあらゆる用途に対応できる情報を付与すると情報量が膨大になるため、目的に応じてアノテーションを行う考え方が示されています。
参考:厚生労働省「アノテーションに関する考え方(案)」
必要以上に細かいアノテーションを設定すると、作業負担やコストが大きくなる可能性があります。AI開発の担当者とアノテーション業務の担当者が事前に認識を合わせ、目的に必要な範囲を見極めることが大切です。
ラベルの定義や判断基準を明文化する
作業を始める前に、付与するラベルの名称や定義、対象範囲、例外の扱いなどをアノテーションルールとして整理しましょう。
ルールに含める主な項目は、例えば以下のようなものです。
- 付与するラベルの種類と定義
- アノテーションの対象と対象外
- 対象範囲の始点と終点
- 複数のラベルに該当する場合の優先順位
- 判断が難しいデータの扱い
- 作業結果の保存形式
- 判断に迷った場合の質問・報告方法など
たとえば、「車」というラベルを付ける場合でも、乗用車だけを対象にするのか、トラックやバス、画像に一部しか写っていない車も含めるのかを決めておかなければなりません。
経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」では、データセットに関する情報として、画像・音声・テキストなどのアノテーションルールに当たる「アノテーション付与基準」を整理することが挙げられています。
出典:経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添」
外部へ委託する場合には、委託会社へ口頭で概要を伝えるだけでなく、具体例や画像を含む作業仕様書として共有すると、認識のずれを抑えやすくなります。
少量のデータで試行してから本作業を始める
アノテーションルールを作成した後は、すぐに全データを処理するのではなく、まず少量のデータを使って試行することが重要です。
実際に作業を行うことで、以下のような問題が見つかることがあります。
- ラベル同士の区別が曖昧になっている
- ルールに記載されていないパターンが存在する
- 作業者によって判断が分かれる
- 想定より作業時間がかかる
- 使用するツールでは必要な処理ができないなど
試行結果をもとにルールや作業方法を修正し、判断基準が固まってから本作業へ移行すると、大量の修正ややり直しを防ぎやすくなります。
外部委託する場合も、最初にサンプルデータを依頼し、期待する品質を満たしているか確認したうえで、作業量を拡大する方法が有効です。
作業者による判断のばらつきを抑える
同じデータを見ても、作業者によって解釈が異なることがあります。特に、専門的な知識が必要なデータや、正常・異常の境界が曖昧なデータでは、判断のばらつきが起こりやすくなります。
厚生労働省の資料では、アノテーションに対する認識が医療者によって異なることや、粒度の決定にはAIの専門家と医療の専門家による認識の擦り合わせが必要であることが課題として挙げられています。また、作業者が同じ言語や基準でアノテーションできるよう、用語や基準を体系化する必要性も示されています。
参考:厚生労働省「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム 議論の整理と今後の方向性」
判断のばらつきを抑えるためには、作業前の研修に加えて、正解例・不正解例の共有や、質問に回答する管理者の配置が有効です。作業中に新しいパターンが見つかった場合は、回答を個別に伝えるだけでなく、ルールへ反映して全作業者へ共有しましょう。
アノテーション後の品質チェックを行う
アノテーションは、ラベルを付けて完了ではありません。作業漏れ、誤ったラベル、表記の不統一などがないかを確認し、必要に応じて修正します。
品質を確認する方法としては、以下のようなものがあります。
- 管理者が成果物の一部または全部を確認する
- 複数の作業者が同じデータを処理し、結果を比較する
- 専門家が判断の難しいデータを確認する
- 一定数のデータを抜き取り、正解率や一致率を測定する
- 完成したデータでAIを学習させ、認識精度を検証する
特に、判断を誤った際の影響が大きい医療や自動運転などの分野では、専門知識を持つ担当者による確認や、複数人によるチェックが必要になる場合があります。
厚生労働省の資料でも、アノテーションの質を担保するためのガイドライン作成や、継続的に質の高いアノテーションを行う人材の育成が課題として挙げられています。
参考:厚生労働省「アノテーションに関する考え方(案)」
外部委託先を選ぶ際は、「チェックを行う」と説明しているかだけでなく、チェックの対象範囲、実施者、回数、不備が見つかった場合の修正方法まで確認することが重要です。
アノテーション業務の注意点
アノテーションの品質は、作成される教師データだけでなく、そのデータを学習したAIの精度や信頼性にも影響します。作業者による判断のばらつきやラベルの付け間違い、データの権利・セキュリティに関する確認不足などがあると、作業のやり直しやAI開発の遅延につながる可能性があります。
アノテーションを自社で行う場合はもちろん、専門会社へ外部委託する場合も、品質管理の方法やデータの取り扱い、発注側と委託先の役割分担を事前に明確にしておくことが重要です。ここでは、アノテーション業務を進める際に特に注意したいポイントを解説します。
- 自動アノテーションの結果も人が確認する
- データの出所や権利、利用条件を確認する
- 外部委託では作業範囲と品質基準を具体的に共有する
- 外部委託では作業範囲と品質基準を具体的に共有する
自動アノテーションの結果も人が確認する
人がすべてのデータを一から処理するのではなく、AIが自動的に付与したラベルを人が確認・修正する「自動アノテーション」も利用されています。
自動アノテーションは作業時間の短縮に役立つ一方、AIが付けたラベルが必ず正しいとは限りません。自動処理だけで完結させず、人による確認と修正を組み合わせることが重要です。
たとえば農研機構が開発した画像アノテーションの仕組みでは、まず約100個の対象物を人がアノテーションし、そのデータで作成した一次検出AIを使って、1万個以上の対象物を自動検出しています。その後、検出結果を人が目視で確認し、誤っている場合は修正するか、学習データから除外する流れが採用されています。
参考:農研機構「野菜の花など農作物のAIモデルを効率的に生成するためのアノテーションプログラム」
データの出所や権利、利用条件を確認する
アノテーション対象のデータを準備する際は、データの品質だけでなく、収集元や利用条件も確認する必要があります。
確認する主な項目は以下のとおりです。
- 誰が、どのような方法で収集したデータか
- AIの学習に利用する権利があるか
- 個人情報や機密情報が含まれていないか
- 第三者の著作物が含まれていないか
- 利用できる目的や期間に制限がないか
- 外部の委託会社へデータを提供できるか
「AI事業者ガイドライン」では、データの収集元、収集方針、収集基準、アノテーション付与基準、利用制約、活用目的などを、データセットに関する情報として整理することが挙げられています。
参考:経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添」
特に個人情報や社外秘のデータを外部へ委託する場合は、データの受け渡し方法、アクセスできる作業者の範囲、保存場所、作業後の削除方法なども確認しましょう。
外部委託では作業範囲と品質基準を具体的に共有する
大量のデータを短期間で処理する場合や、社内に作業者・管理者を確保できない場合は、アノテーション業務を専門会社へ外部委託する方法があります。
ただし、委託会社へデータを渡すだけでは、発注側が期待する教師データが完成するとは限りません。委託前には、たとえば以下のような事項を共有します。
- AIの利用目的
- 対象となるデータと件数
- アノテーションの方法と粒度
- ラベルの定義と判断基準
- 希望する品質基準
- 納品形式と納期
- 検品と修正の方法
- セキュリティ要件
- データや成果物の権利関係
また、実際のデータには、仕様書だけでは判断できない例外が生じることがあります。発注後も委託会社へ任せきりにせず、質問への回答、ルールの更新、品質の確認を継続することが大切です。
アノテーションの品質を安定させるには、作業人数の多さだけでなく、ルール設計、作業者教育、進捗管理、検品、セキュリティまで含めた運用体制が必要です。外部委託先を比較する際は、価格や納期だけでなく、こうした工程を一貫して支援できるかを確認しましょう。
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